重なり合う星々の宝石のような輝き、ハッブルが撮影した“いて座”の球状星団
球状星団「NGC 6717」(Credit: ESA/Hubble and NASA, A. Sarajedini )
【▲ 球状星団「NGC 6717」(Credit: ESA/Hubble and NASA, A. Sarajedini )】

こちらは「いて座」の方向およそ2万光年以上先にある球状星団「NGC 6717」です。球状星団とは、数十万個ほどの恒星が互いの重力に引き寄せられて密集している天体のこと。画像には、中心へ向かうほどに星々の密度が高くなるNGC 6717の様子が明確に捉えられています。

いて座といえば、地球から見て天の川銀河の中心がある方向です。欧州宇宙機関(ESA)によると、天の川銀河の中心は天体から発した光を吸収してしまうガスや塵に満たされており、中心付近にある球状星団の研究を難しくしています。NGC 6717の特徴を見出す上で、研究者は「ハッブル」宇宙望遠鏡の観測装置「広視野カメラ3(WFC3)」「掃天観測用高性能カメラ(ACS)」の両方を頼りにしたといいます。

ちなみに、幾つかの星に見えている十字形の光は、望遠鏡の副鏡を支えるスパイダー(梁)で回折した光によるdiffraction spike(回折スパイク)と呼ばれるものです。この光が見える星は地球の比較的近くに位置しているといい、より遠くにあるNGC 6717の星々と重なり合いながら輝く様子は、様々な色合いや大きさの宝石を散りばめたかのような美しさを感じさせます。

ハッブル宇宙望遠鏡の断面図。副鏡(Secondary Mirror)を支える4本のスパイダーが描かれている(Credit: NASA's Goddard Space Flight Center)
【▲ ハッブル宇宙望遠鏡の断面図。副鏡(Secondary Mirror)を支える4本のスパイダーが描かれている(Credit: NASA's Goddard Space Flight Center)】

冒頭の画像はハッブル宇宙望遠鏡のWFC3とACSによる可視光・赤外線・紫外線の観測データから作成されたもので、ハッブルの今週の一枚「A Glittering Globular Cluster」として、ESAから2021年9月6日付で公開されています。

 

関連:16万光年彼方で輝く宝石のような星々。ハッブルが撮影した大マゼラン雲の散開星団

Image Credit: ESA/Hubble and NASA, A. Sarajedini
Source: ESA/Hubble
文/松村武宏