火星の奇妙な砂丘。氷が描き出した模様と並ぶ窪地、NASA探査機が撮影
火星のカイセル・クレーターにある砂丘の一部 ※疑似カラー(Credit: NASA/JPL-Caltech/University of Arizona)
【▲ 火星のカイセル・クレーターにある砂丘の一部 ※疑似カラー(Credit: NASA/JPL-Caltech/University of Arizona)】

こちらは火星の南半球に位置するカイセル・クレーター(Kaiser crater、直径207km)の内部にある砂丘の一部を、北から南に向かって撮影した画像です。現地時間の午後に撮影されたために砂丘の東側(画像左側)は暗くなっており、まだ明るい西側(画像右側)とのコントラストが美しさを感じさせます。

カイセル・クレーターの砂丘は冬を迎えると二酸化炭素の氷(ドライアイス)の層に覆われますが、春の訪れとともに二酸化炭素の氷は昇華して消えていきます。画像は南半球が冬から春へと移り変わる時期に撮影されており、砂丘の表面を部分的に覆う氷によって砂紋が見やすくなっています。

南北(画像の上下方向)に伸びる砂丘の頂上には幾つもの深い窪地が生じており、そこからガリー(溝状の地形)が発達しています。画像を公開したアリゾナ大学の月惑星研究所(LPL)によると、窪地は氷から昇華して気体になった二酸化炭素が砂を不安定にさせたことで生じたとする仮説が立てられています。また、窪地の日陰にできた氷の塊は崩れたときに下り坂を滑り落ち、斜面にガリーを形成すると考えられています。

冒頭の画像はアメリカ航空宇宙局(NASA)の火星探査機「マーズ・リコネッサンス・オービター(MRO)」の高解像度撮像装置「HiRISE」(The High-Resolution Imaging Science Experiment)による高度250kmからの観測データ(2016年4月19日取得)をもとに作成されたもので、HiRISEの今日の一枚「Frosty Alcoves on Kaiser Crater Dunes」として2021年9月4日付で公開されています。

MROが撮影した砂丘の全体像(モノクロ、上が北の方角)。右上のスケールバーは500mの長さを示す(Credit: NASA/JPL-Caltech/University of Arizona)
【▲ MROが撮影した砂丘の全体像(モノクロ、上が北の方角)。右上のスケールバーは500mの長さを示す(Credit: NASA/JPL-Caltech/University of Arizona)】

 

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Image Credit: NASA/JPL-Caltech/University of Arizona
Source: LPL
文/松村武宏