宇宙望遠鏡「スピッツァー」の観測データをもとに超新星が検出された相互作用銀河「Arp 148」(Credit: NASA/JPL-Caltech/STScI)

【▲ 宇宙望遠鏡「スピッツァー」の観測データをもとに超新星が検出された相互作用銀河「Arp 148」(Credit: NASA/JPL-Caltech/STScI)】

こちらは「おおぐま座」の方向およそ5億光年先にある相互作用銀河「Arp 148」、通称「メイオール天体(Mayall’s Object)」の画像です。特異銀河をまとめたカタログ「アープ・アトラス(The Atlas of Peculiar Galaxies)」に収録されているArp 148の不思議な姿は、2つの銀河が衝突したことで形成されたとみられています。

この画像は、今年で打ち上げから31周年を迎えた「ハッブル」宇宙望遠鏡と、2020年1月に運用を終えた赤外線宇宙望遠鏡「スピッツァー」による観測データをもとに作成されました。白い丸の中には赤外線を放つ天体が捉えられていますが、アメリカ航空宇宙局のジェット推進研究所(NASA/JPL)によると、これは超新星爆発からの赤外線なのだそうです。

超新星爆発は人の目で見える可視光線で検出されることが多いのですが、可視光線には塵に隠されやすい性質があります。星形成活動が活発な若い銀河には星の材料となるガスや塵が豊富に存在するため、超新星爆発が起きても可視光線では発見できないかもしれません。いっぽう、赤外線には塵を通り抜ける性質があるため、塵が豊富な暗黒星雲などの向こう側にある天体や、塵の向こう側で起きた現象を観測することも可能です。

今回、宇宙望遠鏡科学研究所(STScI)のOri Fox氏らの研究グループは、塵に隠された超新星を見つけ出すためにスピッツァーの観測データを利用しました。研究グループは、高光度赤外線銀河(LIRG:luminous infrared galaxy)と呼ばれる塵が豊富な銀河のうち、太陽系から2億パーセク(約6億5200万光年)以内に存在する40個についてのデータを分析。その結果、可視光線では見つかっていなかった5つを含む、合計9つの超新星(II型)が検出されたといいます。冒頭のArp 148で検出された超新星も、可視光線では未検出だった超新星の一つです。

Fox氏によると、理論上予測される超新星の数に対して、実際に可視光線で検出された超新星の数は、発生した場所が遠くなるほど少なくなる傾向にあるといいます。天の川銀河に近い銀河では星形成活動が比較的落ち着いているため、可視光線をさえぎる塵も少なく、検出される超新星の数は理論上の予測に近くなります。いっぽう、遠方の宇宙では星形成活動が盛んで塵も豊富な銀河が多いために、超新星からの可視光線が隠されて見えなくなってしまい、検出される数が予測と比べて少なくなっていると考えられてきたといいます。

研究グループが理論モデルと今回の分析結果を比較したところ、予測される超新星の数と実際の検出数が統計的に一致していることがわかったといいます。つまり、理論モデルが現実を反映できていないのではなく、可視光線だけではすべての超新星を検出できていなかったことになります。「スピッツァーの観測データにもとづく今回の成果は、私たちが長年頼ってきた光学観測のみでは宇宙で発生する恒星の爆発のうち最大半分を見逃している可能性があることを示しています」(Fox氏)

研究グループでは、今年打ち上げ予定の「ジェイムズ・ウェッブ」や、2020年代半ばに打ち上げ予定の「ナンシー・グレース・ローマン」といった、赤外線の波長を使った観測に対応した次世代の宇宙望遠鏡に期待を寄せています。

 

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Image Credit: NASA/JPL-Caltech/STScI
Source: NASA/JPL
文/松村武宏

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