渦巻銀河「IC 1954」(Credit: ESA/Hubble & NASA, J. Lee and the PHANGS-HST Team)

【▲ 渦巻銀河「IC 1954」(Credit: ESA/Hubble , J. Lee and the PHANGS-HST Team)】

こちらは南天の「とけい座」(時計座)の方向およそ4500万光年先にある銀河「IC 1954」です。中心部分の明るいバルジから伸びた渦巻腕がゆるく渦巻くその様子からもわかるように、IC 1954は渦巻銀河に分類されています。ジェットを噴き出す活動銀河や複数の銀河が関わる相互作用銀河のようにダイナミックな姿の銀河とは違い、画像のIC 1954はどこか穏やかな印象を受ける姿をしています。

「ハッブル」宇宙望遠鏡によって撮影されたこの画像は、観測プロジェクト「PHANGS」の一環として取得されました。ハッブル宇宙望遠鏡をはじめ、チリの電波望遠鏡群「アルマ望遠鏡(ALMA)」や、ヨーロッパ南天天文台(ESO)のパラナル天文台にある「超大型望遠鏡(VLT)」が参加したPHANGSプロジェクトでは、近傍宇宙にある90の銀河が5年以上の歳月をかけて高解像度で観測されています。

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欧州宇宙機関(ESA)によると、PHANGSプロジェクトにおいてハッブル宇宙望遠鏡は若い星のグループを、アルマ望遠鏡は星が形成されている円盤や冷たい分子雲を観測してデータを収集。双方の観測データを組み合わせることで、天文学者は若い星とそれを生み出す分子雲の関係を理解することができたといいます。

アメリカ国立電波天文台(NRAO)によると、たとえば銀河の中心部にある分子雲は外側にある分子雲よりも質量が大きく、密度は高く、乱流が激しい傾向があるといったように、同じ銀河でも場所によって分子雲の性質は異なることが、PHANGSプロジェクトの観測によってわかったといいます。これらの観測結果は、今年打ち上げ予定の新型宇宙望遠鏡「ジェイムズ・ウェッブ」による星形成の初期段階の観測にも役立てられます。

冒頭の画像はハッブル宇宙望遠鏡の「広視野カメラ3(WFC3)」による光学および紫外線の観測データをもとに作成されたもので、ハッブル宇宙望遠鏡の今週の一枚「Portrait of a Swirling Galaxy」(渦巻く銀河のポートレート)として、ESAから2021年8月2日付で公開されています。

 

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Image Credit: ESA/Hubble & NASA, J. Lee and the PHANGS-HST Team
Source: ESA/Hubble / NRAO
文/松村武宏

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