【▲ 超大質量ブラックホールのイメージ画。白い靄(もや)のようなものがコロナになります(Credit: Dan Wilkins)】

アメリカのスタンフォード大学は7月28日、ダン・ウィルキンスさん率いる研究チームが、銀河の中心にある超大質量ブラックホールの裏側からやってきたX線フレアの「こだま(echo)」を観測することに初めて成功したと発表しました。

研究チームによれば、このようなこだまを観測することで超大質量ブラックホールのすぐ外側の環境への理解が深まるといいます。

【▲ 超大質量ブラックホールの周囲の構造を解りやすく解説したイラスト(Credit: ESA)】

銀河の中心に存在する超大質量ブラックホールの周囲にガスなどがあると、渦を巻きながら、その超大質量ブラックホールに呑み込まれていきます。この渦を降着円盤といいます。

この降着円盤は、物質同士の摩擦によって莫大な熱が発生し数百万℃という高温になるために、物質が、原子核と自由電子に電離し、プラズマ化しています。

コロナ(イラスト中のCorona)はこのような降着円盤の上空に存在しています。非常に高温なプラズマ化したガス雲で、その温度はX線の観測から約10億℃にも達することがしられています。

なぜコロナがこのように高温なのかについては、降着円盤が生み出す磁場が関係しているのではないかと考えられていますが、否定的な観測結果もあり、よく解っていないというのが実際のところです。

研究チームは、元々は、このように謎に包まれた超大質量ブラックホールのコロナを研究するために、地球から8億光年ほど離れた銀河の中心にある超大質量ブラックホールからやってくるX線フレア(コロナが生み出すX線の急激な増光現象)を観測していました。すると、やがて、研究チームは、X線フレアの後に、より弱く、より遅れた、「色( “colors”))」も異なるX線のフラッシュ(flashes of X-rays)が続いていることに気づきました。

研究チームによれば、このX線のフラッシュは、その特徴から、コロナが生み出したX線フレアが超大質量ブラックホールの裏側の降着円盤に当たって跳ね返ってきたものだといいます。つまり超大質量ブラックホールの裏側からやってきたX線フレアのこだまというわけです。

本来ならば、超大質量ブラックホールの裏側のX線などの光(電磁波)は観測されないはずですが、超大質量ブラックホールの強大な重力のおかげで、時空が捻じ曲げられた結果、観測されないはずのものが観測されたというわけです。アインシュタインの一般相対性理論の正しさがここでも証明されました。

研究チームによれば、このような降着円盤から跳ね返ってくるこだまを観測することで、イベント・ホライズン(事象の地平線。光でさえも出てくることができなくなる境界線)のすぐ外側の環境について新しい視点を提示することができるといいます。

 

Image Credit: Dan Wilkins&ESA
Source: スタンフォード大学のプレスリリース論文
文/飯銅重幸

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