明るい三日月の部分を15回の短時間露光で、残りの薄暗い部分を14回の長時間露光で撮影したものをデジタル合成して作成された「地球照」の画像(Credit: Miguel Claro (TWAN, Dark Sky Alqueva))

【▲ 明るい三日月の部分を15回の短時間露光で、残りの薄暗い部分を14回の長時間露光で撮影したものをデジタル合成して作成された「地球照」の画像(Credit: Miguel Claro (TWAN, Dark Sky Alqueva))】

わたしたちは三日月を眺めても、ふつう冒頭の画像のようには見えません。理由の一つは、目が月の明るい部分と暗い部分を同時に見分けることができないからです。三日月の光が当たっていない部分は、「地球照」earthshine)と呼ばれていますが、太陽の光が当たっている部分よりもはるかに暗いため、通常はよく見えません

デジタル画像技術が発達した現代では、この明るさの差を人工的に小さくすることができます。冒頭の画像は、明るい三日月の部分を15回の短時間露光で、残りの薄暗い部分を14回の長時間露光で撮影したものをデジタル合成して作成されました。

地球照は、地球表面で反射した太陽光が月面を照らし、その光がさらに月面で反射され、再び地球に戻ってくることによって生じます

(上図)左から来た太陽光が地球で反射し月へと向かうことを示しています。(下図)このとき地球から見た月はほぼ新月の状態にあり(左)、月から見た地球は逆にほぼ「満地球」の状態になっています(右)。そのため地球からの光によって月が照らされることになります(Credit: NASA)

【▲(上図)左から来た太陽光が地球で反射し月へと向かうことを示しています。(下図)このとき地球から見た月はほぼ新月の状態にあり(左)、月から見た地球は逆にほぼ「満地球」の状態になっています(右)。そのため地球からの光によって月が照らされることになります(Credit: NASA)】

驚くことに、いまから500年以上も前、レオナルド・ダ・ヴィンチ(1452 – 1519)は地球照の存在に気付き、「地球の海で反射した太陽の光が月の暗い表面を照らす」と著書『コーデックスレスター』(Codex Leicester)に記し、そのスケッチも残しています。ダ・ヴィンチの洞察力には敬服しますが、現在では、海ではなく雲や氷雪によって反射される光が多いと考えられています。

実際の地球照の画像と、レオナルド・ダ・ヴィンチが記した地球照の説明とスケッチ。(Credit: Miguel Claro)

【▲ 実際の地球照の画像と、レオナルド・ダ・ヴィンチが記した地球照の説明とスケッチ(Credit: Miguel Claro)】

ダ・ヴィンチが地球照に気付いたのは、ガリレオが自作の望遠鏡で初めて月を観察したのは1609年とされているので、それよりもさらに100年ほど前のことになります。地球照を「ダ・ヴィンチ・グロー」(Da Vinci glow:ダ・ヴィンチの輝き)と呼ばれることがあるのは、そのことに由来しています。

こちらの画像はレオナルド・ダ・ヴィンチの没後500年にあたる2019年、中国・内モンゴル自治区で撮影された月の出です。東の地平線から昇る月の地球照(ダ・ヴィンチ・グロー)が見事に捉えられています。

2019年、中国・内モンゴル自治区で撮影された東の地平線から昇る月とその地球照(Credit: Likai Lin)

【▲ 2019年、中国・内モンゴル自治区で撮影された東の地平線から昇る月とその地球照(Credit: Likai Lin)】

地球照は月が細いとき、つまり新月の前後が観察の好機です。新月の前ならば明け方の東の空,新月の後ならば夕方の西の空を眺めてみてください。現在はデジタルカメラやスマホで十分撮影することが可能です。露出を調整して、どのように写るか何度か試してみると楽しいでしょう。

 

Image Credit: Miguel Claro (TWAN, Dark Sky Alqueva)NASAMiguel ClaroLikai Lin
Source: APOD (1) (2) NASAMiguel Claro
文/吉田哲郎

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