ハッブルが撮影、再発見と命名が繰り返されてきた“さそり座”の球状星団
球状星団「NGC 6380」(Credit: ESA/Hubble & NASA, E. Noyola)
【▲ 球状星団「NGC 6380」(Credit: ESA/Hubble & NASA, E. Noyola)】

こちらは「さそり座」の方向およそ3万5000光年先にある球状星団「NGC 6380」です。球状星団は数十万個の恒星が密集した天体で、銀河を球状に取り囲むハローに分布しています。天の川銀河の周囲ではNGC 6380をはじめ150個ほどの球状星団が見つかっています。

数多くの星々が集まっている星団はよく宝石箱にたとえられますが、NGC 6380も他の星団と同じように輝く星々漆黒の宇宙とのコントラストが美しい天体です。ちなみに左上で青く明るく輝いているのは「HD 159073」というNGC 6380よりも近くにある恒星で、こちらは地球からおよそ4000光年先にあります。

NGC 6380の「NGC」1888年にまとめられた天体カタログ「ニュージェネラルカタログ(New General Catalogue)」に記載されていることを意味しますが、欧州宇宙機関(ESA)によるとNGC 6380は再発見と命名が繰り返されてきたといいます。1826年にこの星団を最初に発見したスコットランドの天文学者ジェームズ・ダンロップ「Dun 538」と名付けたものの、8年後の1834年に独立して再発見したイギリスの天文学者ジョン・ハーシェル「H 3688」と命名。1959年にはメキシコで活躍した天文学者パリス・ピスミスによって「Tonantzintla 1」(後に「Pismis 25」とも)と命名されています。

また、20世紀中盤までNGC 6380は散開星団だと考えられてきたといいます。散開星団は球状星団よりも少ない数十~数百個の恒星が緩くまばらに集まっている天体で、天の川銀河の銀河円盤にある星団です。NGC 6380が球状星団であることに気付いたのは天文学者のA・D・サッカレーで、1950年代のこととされています。

冒頭の画像は「ハッブル」宇宙望遠鏡の「広視野カメラ3(WFC3)」による可視光線と近赤外線の観測データをもとに作成されたもので、ESAからハッブル宇宙望遠鏡の今週の一枚「Rediscovered, Renamed, Reclassified」として2021年7月12日付で公開されています。

 

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Image Credit: ESA/Hubble & NASA, E. Noyola
Source: ESA/Hubble
文/松村武宏