2018年6月15日にベラ・ルービン・リッジの北にあるダルースドリルサイトにて撮影されたキュリオシティの自撮り画像(Credit: NASA/JPL-Caltech/MSSS.)

【▲ 2018年6月15日にベラ・ルービン・リッジの北にあるダルースドリルサイトにて撮影されたキュリオシティの自撮り画像(Credit: NASA/JPL-Caltech/MSSS.)】

火星の大気中にメタンが存在していることはすでに確認されています。NASAの火星探査車キュリオシティ(Curiosity)の測定によれば、その濃度は0.5ppb(part per billion)ほどになります。

しかし、火星のメタンにはさまざまな謎があります。例えば、その起源です。

地球ではメタンは微生物岩石と水と熱との相互作用などによってつくられます。しかし、火星のメタンがどのようにしてつくられたのかはよく解っていません。

NASAのジェット推進研究所(Jet Propulsion Laboratory)のキュリオシティサイエンスチームに属するクリス・ウェブスターさん率いる研究チームが取り組んでいるのもそのような火星のメタンに関する謎の1つです。

キュリオシティの観測では間違いなくメタンが検出されているのに、なぜかESA(ヨーロッパ宇宙機関)の火星周回探査機トレース・ガス・オービター(Trace Gas Orbiter)の観測ではメタンが検出されないのです。

なぜ2つの観測結果は矛盾しているのでしょうか?

まず、キュリオシティ自体がメタンを発生させている可能性が検討されましたが、詳細な検討の結果、この可能性は否定されました。そうしていると、キュリオシティサイエンスチームの他のメンバーであるジョン・E・ムーアズさんがとても興味深い研究成果を発表しました。

2つの観測結果が矛盾しているのは観測した時間が異なるからではないかというのです。

トレース・ガス・オービターの観測は昼間におこなわれました。これはトレース・ガス・オービターがメタンを正確に検出するためには太陽の光が必要なためです。

これに対して、キュリオシティの観測は夜間におこなわれました。メタンを観測するためには多量の電力が必要になるために、他の観測機器が停止している夜間に観測がおこなわれたためです。

そこで、ムーアズさんは「火星の大気は夜は穏やかなので地中から染み出してきたメタンがそのまま溜まります。ところが、日が昇ると、太陽の熱によって大気に対流が発生するために、溜まったメタンが掻き回されて大気中に拡散してしまうのではないか」と考えました。ちなみにムーアズさんはキュリオシティが探査しているゲール・クレーターにおける風のバターンを研究しています。

これを受けて、研究チームはただちに1つの実験をおこないました。キュリオシティによる昼間におけるメタンの測定を実施したのです。具体的には、昼間→夜間→昼間と連続的にメタンの測定をおこないました。

ムーアズさんの予測によれば、メタンの濃度は、夜間はこれまでの通常程度にまで上昇し、昼間は0にまで低下するはずです。すると、実験の結果、ムーアズさんの予測と一致する結果が得られました。

研究チームのマハフィーさんは「ムーアズさんの考え方はメタンの観測に関する矛盾を説明する1つの考え方になる」とコメントしています。

ただ、謎はまだ残されています。

火星の大気に拡散していったメタンはいったいどこへいってしまったのでしようか?

メタンはとても安定した分子です。そのため太陽光線によって分解されるまでに300年(火星年)ほどかかります。もし、ゲール・クレータのような火星にたくさん存在する普通のクレーターからメタンが放出されているとしたら、大気中に蓄積し、トレース・ガス・オービターによって観測されるはずです。

300年もかからずにメタンが分解されてしまう何かしらのメカニズムが存在する可能性があります。

研究チームは、現在、このメカニズムの正体を解き明かそうと研究を続けています。

 

Image Credit: NASA/JPL-Caltech/MSSS.
Source: NASA
文/飯銅重幸

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