ハッブル宇宙望遠鏡が撮影した銀河「NGC 2146」と、ラス・クンブレス天文台グローバル望遠鏡ネットワークが撮影した超新星「SN 2018zd」(右側の光点)を合成した画像(Credit: NASA/STScI/J. DePasquale, Las Cumbres Observatory)

【▲ ハッブル宇宙望遠鏡が撮影した銀河「NGC 2146」と、ラス・クンブレス天文台グローバル望遠鏡ネットワークが撮影した超新星「SN 2018zd」(右側の光点)を合成した画像(Credit: NASA/STScI/J. DePasquale, Las Cumbres Observatory)】

カリフォルニア大学サンタバーバラ校の平松大地氏をはじめ、東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構(Kavli IPMU)、京都大学、国立天文台などの研究者が参加する国際研究グループは、40年ほど前から理論上予測されていた特殊な超新星爆発が実際に観測されたとする研究成果を発表しました。今回の成果は、恒星の進化に関する謎の一つを解明することにつながるとして期待されています。

■予測されてから40年以上、ついに「電子捕獲型超新星」が見つかった

特殊な超新星爆発だったとされているのは、2018年3月2日に発見された超新星「SN 2018zd」です。SN 2018zdは「きりん座」の方向およそ3100万光年先にある銀河「NGC 2146」で発生したもので、これまで数多くの超新星を発見してきた山形県のアマチュア天文家・板垣公一氏によって発見されました。板垣氏の発見に続き、千葉県のアマチュア天文家・野口敏英氏によってSN 2018zdの爆発直後の詳細な明るさの変化が観測されています。

恒星は内部で起きる核融合反応をエネルギー源として輝くと同時に、自重で潰れないように自らを支えてもいます。青年期から壮年期の恒星では水素の核融合反応がエネルギー源となっていますが、中心部分の水素が使い果たされるとその周辺で核融合反応が起きるようになり、恒星の外層が膨張して赤色巨星赤色超巨星へと進化していきます。

恒星の最期はその質量によって異なると考えられていて、太陽の8倍以上ある比較的重い恒星は超新星爆発を起こして中性子星ブラックホールを残し、太陽の8倍以下の比較的軽い恒星は超新星爆発を起こさずに白色矮星へ進化するとみられています。たとえば、太陽やシリウスは白色矮星になりますが、ベテルギウスは超新星爆発を起こすとされています。

ただし、その分岐点にあたる星……太陽の8~10倍の質量を持つ恒星は、それ以上重い恒星とは異なるタイプの超新星爆発を起こすのではないかと考えられてきました。これは茨城大学や東京大学教養学部に当時所属していた野本憲一氏(現・Kavli IPMU上級科学研究員)らが1980年に初めて提唱した現象で、「電子捕獲型超新星」と呼ばれています。

質量が太陽の10倍以上ある恒星の場合、水素に続いてヘリウム、炭素、ネオン、酸素、ケイ素といったより重い元素の核融合が段階的に進んでいくものの、でできたコア(核)が生成されるようになると自重を支えられなくなってコアが崩壊し、その反動によって恒星の外層が吹き飛ぶ「コア崩壊型」や「重力崩壊型」と呼ばれる超新星が起きると考えられています。

電子捕獲反応の模式図。コア(中心核)を構成するネオン(Ne)やマグネシウム(Mg)が電子(e<sup>-</sup>)を捕獲し始めることで圧力が下がり、コアが崩壊して超新星爆発に至ると考えられている。反応の過程ではナトリウム(Na)やフッ素(F)が大量のニュートリノ(ν)とともに生成されるとみられている(Credit: S. Wilkinson; LCO)

【▲ 電子捕獲反応の模式図。コア(中心核)を構成するネオン(Ne)やマグネシウム(Mg)が電子(e)を捕獲し始めることで圧力が下がり、コアが崩壊して超新星爆発に至ると考えられている。反応の過程ではナトリウム(Na)やフッ素(F)が大量のニュートリノ(ν)とともに生成されるとみられている(Credit: S. Wilkinson; LCO)】

いっぽう、野本氏らの予測によると、太陽の8~10倍の質量を持つ恒星の場合は鉄よりも軽い酸素・ネオン・マグネシウムでできたコアが形成され、電子の力によって自重を支えるようになるといいます。やがてネオンやマグネシウムによる電子捕獲反応(原子核の陽子が電子と合体して中性子に変化する反応)が起こることで、恒星は自重を支えられなくなってコアが崩壊し、外層が吹き飛んで超新星爆発に至ると考えられてきました。これが「電子捕獲型」超新星と呼ばれる現象です。そのエネルギーは、コア崩壊型超新星と比べて10分の1程度と少ないことが予想されていました。

研究グループによると、世界各地の望遠鏡や宇宙望遠鏡を使ってSN 2018zdを詳細に観測したところ、超新星に含まれる元素の量、爆発のエネルギー、星の周囲の環境といった特徴はコア崩壊型超新星とは異なり、電子捕獲型超新星の理論予測に一致していたといいます。また、その場所は偶然にも「ハッブル」宇宙望遠鏡が超新星爆発前に観測を行っており、爆発した恒星が太陽の約8倍の質量を持っていたことも判明しました。

研究グループは、理論上予測された特徴がすべて備わっていたことから、SN 2018zdは初めて見つかった電子捕獲型超新星だったと結論付けています。観測的な特徴が判明したことで類似の超新星を見つけやすくなったことから、今後はより多くの電子捕獲型超新星の観測を通して、詳細な情報が得られるようになると考えられています。研究に参加したカリフォルニア大学バークレー校の天文学者アレックス・フィリペンコ氏は、今回の成果について「恒星の進化の最終段階に関する私たちの理解を大幅に高めるものです」と語っています。

ハッブル宇宙望遠鏡が撮影した「かに星雲」(Credit: NASA, ESA and Allison Loll/Jeff Hester (Arizona State University))

【▲ ハッブル宇宙望遠鏡が撮影した「かに星雲」(Credit: NASA, ESA and Allison Loll/Jeff Hester (Arizona State University))】

長いあいだ理論上の現象だった電子捕獲型超新星ですが、その候補とされてきた超新星もあります。最有力の候補だと考えられてきたのは、西暦1054年に「おうし座」の方向で観測された超新星「SN 1054」です。SN 1054は超新星残骸の「かに星雲」や、「かにパルサー」と呼ばれるパルサー(高速の自転にともなって点滅するように周期的な電磁波が観測される中性子星の一種)を残したとされています。

藤原定家の「明月記」にも記録されているSN 1054は、かに星雲の観測データを分析した結果をもとに「電子捕獲型超新星だったのではないか」と考えられてきました。しかし、電子捕獲型超新星の特徴を併せ持つ超新星がこれまで実際に観測されたことはなく、本当に起こるのかどうかがはっきりしていなかったといいます。

また、板垣氏と野口氏による爆発直後のSN 2018zdの発見と観測が、その正体を明らかにする上で重要な役割を果たしたといいます。発表では、超新星の捜索が世界中の大型望遠鏡で行われている現代でも、アマチュア天文家の発見が天文学に大きなインパクトを与えることが示されたと言及されています。

電子捕獲型超新星の存在を予測した野本氏は「私と共同研究者で40年前に存在を予言し、かに星雲との関連を提案していた電子捕獲型超新星がついに発見され、非常に嬉しく思っています。観測データを得るため、関係者の方々が多大な努力を払われたこと、私からも敬意と感謝を申し上げたいと思います。今回の成果は、観測と理論の組み合わせによって得られた大変素晴らしい成果です」とコメントしています。

 

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Image Credit: NASA/STScI/J. DePasquale, Las Cumbres Observatory
Source: Kavli IPMU / UC Berkeley
文/松村武宏

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