オーロラとは似て非なるスティーブが生みだす水辺の絶景
【▲2021年3月中旬にアメリカのミシガン州にあるコッパー・ハーバー(Copper Harbor)上空に現れたスティーブ。(Credit:MaryBeth Kiczenski)】

スティーブ(STEVE)はどのようにして生まれるのでしょうか?

スティーブ(STEVE)とは「強力な熱放射速度の増強(Strong Thermal Emission Velocity Enhancement)」を意味します。この現象は古くから知られていた可能性がありますが、一見すると通常のオーロラと似ているため、その違いが見過ごされていたかもしれません。

また、スティーブの色や形状がオーロラとは異なることが認識されたのは、2016〜2018年頃のことです。

2021年3月中旬にアメリカのミシガン州にあるコッパー・ハーバー(Copper Harbor)上空に現れたスティーブ(Credit: MaryBeth Kiczenski)
【▲ 2021年3月中旬にアメリカのミシガン州にあるコッパー・ハーバー(Copper Harbor)上空に現れたスティーブ(Credit: MaryBeth Kiczenski)】

スティーブはピンクや紫の鮮やかな一本の筋のように見えますが、そのメカニズムの解明は容易ではなく、現在も活発に研究が進められています。スティーブは「サブオーロラ帯イオンドリフト(Subauroral Ion Drift、SAID)」と呼ばれる高速で高温の大気イオン流に関係している可能性が指摘されています。

また、スティーブは緑色の「ピケットフェンス(picket-fence)」と呼ばれるオーロラ現象を伴うことがよくありますが、その理由はまだ解明されていません。

冒頭の画像は、2021年3月中旬にアメリカのミシガン州コッパー・ハーバー(Copper Harbor)で連続撮影されたもので、前景と背景が組み合わされています。この明るいスティーブは数分間続き、地平線から地平線にかけて広がり、通常のオーロラの間に現れました。

2017年にカナダのマニトバ州にあるチャイルズ・レイク(Childs Lake)の上空で撮影されたスティーブ。左下には緑色のピケットフェンスオーロラも確認できます(Credit: NASA, Krista Trinder)
【▲ 2017年にカナダのマニトバ州にあるチャイルズ・レイク(Childs Lake)の上空で撮影されたスティーブ。左下には緑色のピケットフェンスオーロラも確認できます(Credit: NASA, Krista Trinder)】

こちらの画像は2017年にカナダのマニトバ州チャイルズ・レイク(Childs Lake)で撮影されたもので、スティーブが天の川を横切る様子が見事に捉えられています。左下にはピケットフェンスオーロラも確認できます。

オーロラは極域で発生しますが、スティーブはそれよりも低緯度で発生し、冬には現れないとされています。スティーブもオーロラと同様に物理的には大気発光現象ですが、異なる特徴を持ち、独自の絶景を楽しませてくれます。

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オーロラとスティーブの違い

オーロラとスティーブの主な違いは、発生場所や見た目が異なります。オーロラは極域で発生し、緑色や赤色など多彩な光を放つことが多く、太陽からの荷電粒子が地球の磁場と相互作用して生じます。一方、スティーブはオーロラより低緯度で発生し、ピンクや紫の一本の光の帯として現れるのが特徴です。

 

Source

  • Image Credit:MaryBeth Kiczenski、NASA, Krista Trinder
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文/吉田哲郎