ジョンズホプキンス大学(Johns Hopkins University)の新たなコンピュータシミュレーションによる研究は、土星の内部構造に興味深い視点を提示し、ヘリウムの「雨」(helium rain)の厚い層が土星の磁場に影響を与える可能性を示唆しています。この研究結果は2021年5月5日「AGU Advances」誌に公開されました。

この図は土星の内部を示しており、厚い「不溶性ヘリウム」の層があり、ヘリウムの塊がコアに向かってゆっくりと落ちていきます(Credit: Yi Zheng (HEMI / MICA Extreme Arts Program))

【▲ この図は土星の内部を示しており、厚い「不溶性ヘリウム」の層があり、ヘリウムの塊がコアに向かってゆっくりと落ちていきます(Credit: Yi Zheng (HEMI / MICA Extreme Arts Program))】

何十年もの間、惑星科学者は、土星の内部はほとんどが水素とヘリウムであると考えていました。しかし、これらの元素の分布と内部での物理的状態は不明のままでした。土星は、磁場がその回転軸とほぼ正確に整列している(軸対称性である)ことを私たちが知っている唯一の惑星です。現在、カッシーニ探査機の最終ミッションによって得られたデータが、土星の整列した磁場につながる内部条件と物質の分布を理解するのに役立っています。

ジョンズホプキンス大学のChi Yan氏とSabine Stanley氏は、惑星内のさまざまな力が生成する磁場を計算するために開発したコンピューターモデルに、このデータを組み込みました。彼らは、観測結果に合わせて最適化するようモデルを微調整しました。

土星の表面外部に見られる磁場をモデル化した図(Credit: Ankit Barik / Johns Hopkins University)

【▲ 土星の表面外部に見られる磁場をモデル化した図(Credit: Ankit Barik / Johns Hopkins University)】

この最適化したモデルにより、Yan氏とStanley氏は、土星の内部が4層構造(最外殻のガス大気を含めてになっていることを発見しました。内核は固体であるか、対流のない層状の流体である可能性があります。土星が最初に凝縮した岩と氷が含まれており、表面までの約4分の1の距離まで伸びています。

次に、金属水素と溶解したヘリウムからなる対流性の外核があり、この層が惑星のダイナモを支えています。温度と圧力が非常に高いため、この層は超臨界流体と呼ばれる状態にあり、液体でも気体でもありません。表面に向かって約42%にまで達しています。

3番目の層も超臨界流体ですが、その中のヘリウムは水素に溶解せず、水中の油のように分離したままです。ここで、ヘリウムは流体の水素を通って非常にゆっくりと「流れ落ち」ます。これは以前から予測された現象ですが、確認されたことはありませんでした。

水素とヘリウムは、表面に近い低圧部で混ざり合い、コア内で再び混ざり合いますが、100万気圧下では、水と油のように混和しなくなります。流体の約4分の1を占めるヘリウムは、金属水素内に塊を形成し、惑星の奥深くへと落下します。

また、驚くべきことに、このシミュレーションは、土星の北極と南極の近くにわずかな程度の非軸対称性が実際に存在する可能性を示唆しています。

それを確認するには極を直接観測する必要がありますが、この発見は、土星が自転する速度、つまり1日の長さを測定する方法など、科学者を何十年も悩ませてきた別の問題を理解する上で影響を与える可能性があります。

Stanley氏は自分たちの研究について「私たちは1つの解決策を見つけました」と語っています。しかし、この研究結果は、土星の奇妙な内部を説明する他の方法を除外していません

「土星がどのように形成され、それが時間とともにどのように進化したかを研究することで、私たち自身の太陽系内や、さらにそれを超えて、土星に似た他の惑星の形成についても多くを学ぶことができます」とStanley氏は述べています。

 

 

Image Credit: Yi Zheng (HEMI / MICA Extreme Arts Program)、Ankit Barik / Johns Hopkins University
Source: Johns Hopkins UniversityAGU AdvancesSky & Telescope
文/吉田哲郎

 オススメ関連記事