インディアナ大学ブルーミントン校のBrendan Reed氏らの研究グループは、高密度な天体である「中性子星」の直径について、従来の推定値よりも大きい可能性を示した研究成果を発表しました。
中性子星とは、太陽と比べて8倍以上重い恒星が超新星爆発を起こした際に形成されると考えられている、中性子が主成分の高密度な天体です。その一部は「パルサー」(高速の自転にともない点滅するように周期的な電磁波が観測される中性子星の一種)や「マグネター」(典型的な中性子星と比べて最大1000倍も強力な磁場を持つ)としても知られています。
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今回研究グループが推定値を算出した平均的な中性子星(質量は太陽の1.4倍)の直径は、26.5~28.5kmです。これは約20~24kmとされていた従来の推定と比べて数km大きく、体積はざっと2倍前後大きいことを意味します。発表では今回の成果について、中性子星のサイズに関する理論を再考する必要があるかもしれないと言及しています。
直径の算出には、アメリカのトーマス・ジェファーソン国立加速器施設で実施された、鉛(208Pb)の原子核における中性子スキンの精密な厚さの測定データが用いられました。中性子スキンとは、陽子よりも中性子のほうが多い原子核の表層にある、主に中性子だけでできた部分のこと。研究グループによると、鉛(208Pb)の中性子スキンの厚さは0.283±0.071フェムトメートル(1フェムトメートル=1兆分の1ミリメートル)とされています。
角砂糖1個分のサイズで数億トンもの質量があるという高密度な中性子星の内部を実験で再現することはできませんが、そのサイズや構造についてのヒントが得られる可能性があるとして、中性子スキンは研究者から注目されています。研究に参加したフロリダ州立大学のJorge Piekarewicz氏は「中性子星の性質についての知見が得られる実験室で可能なことは何でも役立ちます」とコメントしています。
なお、中性子星どうしの合体にともなう爆発現象「キロノバ」では、鉄よりも重い元素が生成される「r過程」と呼ばれるプロセスが引き起こされると考えられています。私たちが住む地球上の環境とはかけ離れた中性子星の世界ですが、文明活動と関わりの深い金などの元素を介して、人類と中性子星はつながっているとも言えるかもしれません。
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Image Credit: NASA's Goddard Space Flight Center
Source: フロリダ州立大学
文/松村武宏