オハイオ州立大学のTharindu Jayasinghe氏らの研究グループは、太陽の約3倍の質量を持つ恒星質量ブラックホール(質量が太陽の数十倍程度までのブラックホール)を発見したとする研究成果を発表しました。研究グループは、見つかったのは観測史上最も軽いブラックホールであり、中性子星とブラックホールの間にある「質量ギャップ」を埋めるものだとしています。
研究グループによると、今回発見が報告されたブラックホールは「いっかくじゅう座(一角獣座)」の方向およそ1500光年先にある赤色巨星「V723」と連星を成しています。V723の質量は太陽とほぼ同じであるものの、直径は太陽の約25倍まで膨らんでいるとみられています。
いっかくじゅう座で発見されたことにちなんで、研究グループはこのブラックホールを「ユニコーン」と呼んでいます。「ユニコーン」とV723は約60日周期で互いの周りを公転しており、3倍の質量がある「ユニコーン」の重力がもたらす潮汐力によって、V723は引き伸ばされた形をしていると予想されています。研究に参加したオハイオ州立大学のTodd Thompson氏は「月が潮の干満を引き起こすように、ブラックホールは星の形をフットボールのように歪めます」と語ります。
■相次ぐ「軽いブラックホール」の発見
恒星質量ブラックホールと中性子星は、どちらも超新星爆発によって形成されると考えられています。理論上、中性子星の質量は太陽の2.5倍が上限であり、中性子星どうしの合体などによってこの質量を上回ると、潰れてブラックホールになると予想されています。そのいっぽうで、太陽の5倍よりも軽いブラックホールは見つかっていませんでした。
ところが2019年10月、今回の研究にも参加したThompson氏らの研究グループによって、質量が太陽の約3.3倍と推定される恒星質量ブラックホールの発見が報告されました。ブラックホールが見当たらない「質量が太陽の2.5~5倍」の空白域は「質量ギャップ(mass gap)」として知られていましたが、この発見は「質量ギャップにもブラックホールが存在する可能性」を示すものとなり、今回の「ユニコーン」の発見にもつながっています。
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Thompson氏は、恒星の誕生とその最期を理解するためにも、質量ギャップのブラックホールがより多く見つかることに期待を寄せています。
Image Credit: Lauren Fanfer
Source: OSU (1) / OSU (2)
文/松村武宏