【▲ プロキシマ・ケンタウリで起きた強力なフレアを描いた想像図(Credit: NRAO/S. Dagnello)】

コロラド大学ボルダー校のMeredith MacGrego氏らの研究グループは、太陽に一番近い恒星「プロキシマ・ケンタウリ」において、太陽フレアよりも約100倍強力なものを含む複数のフレアが検出されたことを発表しました。プロキシマ・ケンタウリではこれまでに2つの太陽系外惑星が報告されていますが、研究グループによると、これらの惑星は日常的にフレアにさらされている可能性があるようです。

■1万4000倍も強くなった紫外線の放射をハッブル宇宙望遠鏡がキャッチ

太陽系外惑星はこれまでに4300個以上が見つかっていて、そのうちの幾つかは恒星のハビタブルゾーン(地球型惑星の表面に液体の水が存在し得る領域)を周回する岩石惑星とみられています。約4.22光年先にあるプロキシマ・ケンタウリで発見された「プロキシマ・ケンタウリb」もその一つです。このような系外惑星は生命が存在できる環境を有している可能性がありますが、それを左右する要素のひとつが、主星である恒星の活動です。

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ハビタブルゾーンを公転する岩石惑星の多くは、太陽よりも軽くて低温な赤色矮星(M型星)の周囲で見つかっていますが、赤色矮星では恒星の表面で発生する爆発現象「フレア」が起きやすいことが知られています。強力なフレアがもたらす放射線は生命を脅かす可能性がありますし、長期的にはフレアによって惑星の大気が徐々に剥ぎ取られてしまうことも考えられます。

研究グループは赤色矮星のフレアをより深く理解するべく、「ハッブル」宇宙望遠鏡や「アルマ望遠鏡」といった地上と宇宙の9つの望遠鏡を使い、2019年にプロキシマ・ケンタウリを合計40時間観測。その結果、プロキシマ・ケンタウリで発生した複数のフレアを検出したとされています。

特に注目されたのは、2019年5月1日に5つの望遠鏡で検出された7秒間のフレアでした。研究グループによると、このフレアでは可視光線はそれほど放出されなかったものの、紫外線とミリ波(波長1~10mmの電波)では非常に明るくなり、紫外線の強さは数秒間でおよそ1万4000倍に達したといいます。

研究に参加したアリゾナ州立大学のParke Loyd氏は、フレアの紫外線を捉えたハッブル宇宙望遠鏡の観測データを見た時のことを「注目すべき現象を捉えたことがすぐにわかりました」と振り返ります。冒頭でも触れたように、このフレアは太陽で起こる同様のフレアと比べて約100倍強く、プロキシマ・ケンタウリで検出された最大規模のフレアとされています。

MacGrego氏によると、プロキシマ・ケンタウリを周回する惑星は少なくとも1日あたり1回はフレアにさらされている可能性があるようです。研究グループでは、生命に適した環境を持ち得る惑星に対してフレアが及ぼす長期的な影響を見極めるために、フレアの規模と発生する頻度の関係を把握することが次のステップだとしています。

 

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Image Credit: NRAO/S. Dagnello
Source: CU Boulder / ASU
文/松村武宏

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