【▲ 重なり合う連星ブラックホールの見え方。NASAが公開したシミュレーション動画より(Credit: NASA’s Goddard Space Flight Center/Jeremy Schnittman and Brian P. Powell)】

周囲の時空間を大きく歪めるほど重力が強い天体「ブラックホール」。事象の地平面(イベント・ホライズン)の内側に入れば光でさえも脱出できないブラックホールを直接見ることはできませんが、国際協力プロジェクト「イベント・ホライズン・テレスコープ(EHT)」が観測した楕円銀河「M87」の超大質量ブラックホールのように、重力によって進む向きを曲げられた光(電磁波)を捉えることで間接的に観測することができます。

■NASAが公開した「ブラックホールの見え方」のシミュレーション

【▲ ブラックホールを横から見た場合のシミュレーション動画(Credit: NASA’s Goddard Space Flight Center/Jeremy Schnittman)】

こちらは2019年9月にアメリカ航空宇宙局(NASA)から公開された「ブラックホールの見え方」を示したシミュレーション動画です。

オレンジ色に輝いているのはブラックホールを周回しながら落下する高温の物質でできた「降着円盤」で、この動画では左向きに回転している降着円盤を斜め上から見下ろした様子が再現されています。降着円盤のうち、こちらに近づくように動く左側のほうが明るく、こちらから遠ざかるように動く右側のほうが暗く見えますが、これは相対論的ビーミング(※)と呼ばれる効果が考慮されているためです。

※…光速に近い速度で移動する物質から発せられた光(電磁波)が、物質がこちらに近づくように動く場合には明るく(強く)、遠ざかるように動く場合は暗く(弱く)観測される特殊相対論的効果

動画では右側から左側へとブラックホールを飛び越えるように降着円盤が流れているように見えますが、実際にはブラックホールの裏側に回り込んでいます。ブラックホールの重力によって、裏側に回り込んだ部分の上面から放射された光の進む向きが曲がってこちらに向かうようになることで、このように見えるというわけです。ブラックホールの下に見える部分も同様で、こちらは裏側にある降着円盤の下面から放射された光が見えています。

関連:ブラックホールはどう見える? NASAが新しいシミュレーション動画を公開

【▲ シミュレートされたブラックホールを縦方向に360度ぐるりと回転させ続けている動画(Credit: NASA’s Goddard Space Flight Center/Jeremy Schnittman)】

■2つのブラックホールで構成された連星はどう見える?

前述のシミュレーション動画は以前soraeでも紹介したことがあるのですが、今回NASAから「連星ブラックホールの見え方」をシミュレートした新しい動画(英語)が公開されました。連星ブラックホールとは、2つのブラックホールから成る連星のこと。互いに周回し合う2つのブラックホールがどのように見えるのか、まずはその様子をご覧下さい。

▲連星ブラックホールの見え方をシミュレートした動画「The Doubly Warped World of Binary Black Holes」▲
(Credit: NASA’s Goddard Space Flight Center/Jeremy Schnittman and Brian P. Powell)

今回シミュレートされたブラックホールの質量は、それぞれ太陽の2億倍と1億倍。降着円盤の色はブラックホールが重い方はオレンジ色、軽い方は青色に着色されています。

連星ブラックホールを横から見た場合2つのブラックホールが重なって見える位置関係になると、手前のブラックホールの重力によって奥のブラックホールの降着円盤から放射された光の進む向きが曲げられてしまい、時々刻々と変化する複雑な姿(冒頭に静止画を掲載)に見えることがわかります。また、横から見たときに近づいてくるブラックホールが小さく、離れていくブラックホールが大きく見える相対論的な現象も再現されています。

いっぽう、連星ブラックホールを上から見た場合に片方のブラックホール周辺をクローズアップすると、もう片方のブラックホールを横から見たときの像が歪みながらも小さく見えることがわかります。片方のブラックホールから横向きに放射された光の進む向きが、もう片方のブラックホールの重力によって90度曲げられることで、このように上と横から同時に見ることができるのだといいます。

【▲ 片方のブラックホール(青色)を上から見た様子。もう片方のブラックホール(オレンジ色)を横から見た像が左上に歪んだ状態で見えていることがわかる(Credit: NASA’s Goddard Space Flight Center/Jeremy Schnittman and Brian P. Powell)】

NASAによると、シミュレーション動画の作成に必要な計算を最新のデスクトップコンピュータで行おうとすれば10年はかかるといいます。今回のシミュレーションではNASA気候シミュレーションセンターのスーパーコンピューター「Discover」が用いられており、Discoverが持つ12万9000コアのうち約2パーセントを使った1日ほどの計算をもとに作成されたとのことです。

 

関連:光さえも脱出できないほど重力が強い天体「ブラックホール」とは?

Image Credit: NASA’s Goddard Space Flight Center/Jeremy Schnittman and Brian P. Powell
Source: NASA
文/松村武宏

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