【▲ 合体の途上にある2つのクエーサーの想像図。銀河の合体によりガスを供給され活動を停止していた銀河の中心にある超巨大ブラックホールが活動を再開しクエーサーとなる。(Credit: NASA, ESA, and J. Olmsted (STScI))】

NASAは4月6日、イリノイ大学のユエ・シェンさん率いる研究チームが、NASAのハッブル宇宙望遠鏡を使って、一度に2つの二重クエーサーを発見したと発表しました。これらの二重クエーサーは、100億年前のもので、これまで発見された二重クエーサーのなかで最も古いものになります。

ほとんどの銀河の中心には太陽の質量の100万~数十億倍にもなる大質量ブラックホールが存在しています。その周りにあるガスや塵は渦を巻きながらこの超大質量ブラックホーに呑み込まれていくわけですが、このとき、ガスや塵同士の摩擦によって莫大な熱が発生し、ガスや塵がプラズマ化することで、X線、紫外線、可視光線などの強烈な光(電磁波)が発生します。これがクエーサー(活動銀河核)です。

二重クエーサーは、このようなクエーサーがペアになったもので、銀河同士の衝突の際などにあらわれます。銀河同士の衝突によって、それぞれの銀河のガスが、掻き回され、活動を停止していたそれぞれの超巨大ブラックに落ち込むことで、それらが点火(ignite)され、二重クエーサーとして観測されるというわけです。

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しかし、このような二重クエーサーをみつけるのはとても難しいです。二重クエーサーは1000個のクエーサーにつき1個ほどしか存在しないと考えられるからです。

どのように二重クエーサーを発見した?

では、研究チームはどのようにして一度に2つもの二重クエーサーを発見したのでしょうか?

まず、研究チームは、ヨーロッパ宇宙機関(UAE)の位置天文衛星ガイア などの観測データを使って、全天に散らばる100億年前のたくさんのクエーサーのなかから二重クエーサーの候補を絞り込みました。

このとき研究チームが着目したのはクエーサーの微妙な揺れでした。二重クエーサーは2つのクエーサーからできているために、それぞれの明るさが変化すると、あたかも1つのクエーサーが揺れているように観測されるのです。

研究チームは、鮮明な視野を誇るハッブル宇宙望遠鏡を使った最初の観測で、このようにして絞り込んだ4つの候補のなかから、2つもの二重クエーサーを発見したというわけです。

【▲ ハッブル宇宙望遠鏡の鮮明な視野によって撮影された今回発見された2つの二重クエーサーの画像(Credit: NASA, ESA, H. Hwang and N. Zakamska (Johns Hopkins University), and Y. Shen (University of Illinois, Urbana-Champaign))】

研究チームによれば、これらの二重クエーサーは数千万年後には合体を完了し、さらに巨大な超大質量ブラックホールを形成するそうです。

 

関連:宇宙で最も明るい天体「クエーサー」とは?

Image Credit:NASA, ESA, H. Hwang and N. Zakamska (Johns Hopkins University), and Y. Shen (University of Illinois, Urbana-Champaign)/NASA, ESA, and J. Olmsted (STScI)
Source:NASA論文
文/飯銅重幸

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