※太陽コロナ質量放出の速度について「時速5700キロメートル」と表記しておりましたが、正しくは「時速500万キロメートル」でした。訂正の上、お詫び申し上げます。【4月13日12時40分追記】
2012年8月31日、太陽大気に浮かぶガスの塊「フィラメント」が吹き飛ばされ、時速500万キロメートルを超える速さで宇宙空間に放出されるイベントがありました。この動画はそのときの太陽の様子を3種の観測衛星「Solar Dynamics Observatory (SDO)」、「Solar Terrestrial Relations Observatory (STEREO)」、「Solar Heliospheric Observatory (SOHO)」が捉えたものです。
このイベントの画像は過去の記事で紹介していますが、動画では3つの衛星それぞれの視点で見ることができます。
初めの1分ほどはSDOの動画です。濃い赤色で見えるフィラメントが吹き飛ばされていく様子が捉えられています。太陽全体の映像では左下の4分の1弱くらいに収まっていますが、太陽の直径が地球を109個並べたほどですので、地球よりもはるかに大きなスケールでのイベントであることがわかります。下の図はこのフィラメントと地球の大きさと比べたものです。
1分5秒からはSOHOによる動画です。中央に「Sun」とある円は太陽ですが、これは太陽の大気やその周辺を観測するには太陽が明るすぎるために隠しているものです(このタイプの観測装置を「コロナグラフ」と言います)。実際の時間の流れよりも早送りした動画ではありますが、向かって左側から何かが爆発したかのように吹き出していく様子が捉えられています。この現象は「コロナ質量放出」と呼ばれ、このイベントで吹き出す速度は時速500万キロメートルを超えるものでした。
1分17秒頃からは同じくSOHOからの動画ですが、さらに広い範囲を観測したものです。太陽をさらに超えるスケールで、宇宙空間に広がっていくのがわかります。
その後の1分30秒頃からはSTEREOの動画です。ここでは向かって右側に吹き出し、画像の一部が一瞬だけ真っ白になっています。これはおそらく観測装置のセンサーから見て明るすぎるためではないかと考えられますが、このイベントの激しさを物語るものとも言えるでしょう。
幸いにもこのイベントは地球に直接向かってきたものではありませんでしたが、地球の磁気圏にぶつかり、3日後の9月3日にオーロラが現れたということです。こうしたイベントは科学的に興味深いものではありますが、規模や向きによっては人工衛星や通信に影響を及ぼしてしまう可能性もあるため、「宇宙天気予報」というテーマで研究が続けられています。
Movie: NASA Goddard Space Flight Center
Source: NASA Goddard Space Flight Center Youtubeチャンネル、Goddard Media Studios
文/北越康敬