SS 433は、最も奇妙な連星系のひとつです。
「SS 433」の名前は、StephensonとSanduleakが作成した輝線星カタログ(水素原子に特有のスペクトル線を持つ天の川銀河内の恒星カタログ)の433番に掲載されていることに由来します。また、SS 433は、わし座の方向約1万8,000光年先の超新星残骸「W50」(通称「マナティ星雲」)の中に位置しています。
この連星系の特徴は、「コンパクト天体」(高密度星である白色矮星や中性子星とブラックホールの総称)が、ジェット(イオン化したガスの噴流)を伴った降着円盤を形成していることにあります。この円盤とジェットは、遠方の銀河の中心にある超巨大ブラックホールを取り巻く円盤に似ていることから、SS 433は「マイクロクエーサー」と呼ばれています。
観測データをもとにしたアニメーション動画では、ブラックホールか中性子星と考えられているコンパクト天体(主星)の周りに、高温で巨大な通常の恒星(伴星)が固定されている様子が最初に紹介されています。
映像が始まると、伴星である恒星から重力で物質が引き剥がされ、降着円盤に落ちていく様子が映し出されます。また、主星はジェットを光速の約4分の1の速度で逆方向に噴出しています。そして、その噴出物が渦巻き状に広がっていく様子を上から見た映像が映し出されます。さらにW50(マナティ星雲)の中心付近では、ジェットが消滅していく様子が映し出されています。
2018年、SS 433は、メキシコのHAWC(High Altitude Water Cherenkov Experiment:高高度水チェレンコフガンマ線観測所)の検出器によって、非常に高いエネルギーのガンマ線を放出していることが予想外に発見されました。
さらにNASAのフェルミ衛星(ガンマ線観測衛星)が撮影したアーカイブデータを解析したところ、主星から離れた場所に、理由は不明ながら、SS 433が噴出しているジェットの歳差運動の周期と同じ162日周期でガンマ線を放出しているガンマ線源が見つかりました。
SS 433は発見が報告されてから40年以上が経ちますが、いまだにその詳細は解明されていないようです。
Video Credit: DESY, Science Communication Lab
Source: APOD
文/吉田哲郎