氷床に到達した高温の噴流(ジェット)を描いた想像図(Credit: Mark A. Garlick)

氷床に到達した高温の噴流(ジェット)を描いた想像図(Credit: Mark A. Garlick)

ケント大学のMatthias van Ginneken氏らの研究グループは、南極で採取されたサンプルを分析した結果、約43万年前に南極で天体衝突が起きたことを示す証拠が見つかったとする研究成果を発表しました。天体のサイズは少なくとも幅100mと推定されており、気化した天体に由来する物質の噴流(ジェット)が地上に到達したと考えられています。

■天体が蒸発後に再凝縮してできたとみられる球状粒子を発見

2017年から2018年にかけて、ベルギーのプリンセス・エリザベス基地を拠点として、南極のセール・ロンダーネ山地におけるサンプルの採取が実施されました。このサンプルを研究グループが調べたところ、幾つもの球状粒子(スフェルール)が見つかったといいます。

研究グループによると、微量元素の化学的性質やニッケル含有量の高さなどから、この球状粒子は地球外から飛来した天体を構成していた物質が大気圏へ突入した際に気化した後、再び凝縮したことで形成されたものだと考えられています。天体は地表へ到達する前に気化したとみられるため、衝突に由来するクレーターは残されていない可能性があります。いっぽう、酸素の同位体比などの分析結果からは、溶けて蒸発した天体由来の噴流が南極の氷床に高速で到達したことが考えられるといいます。

地表にクレーターを残すほどの天体衝突が甚大な被害をもたらすことは容易に想像できますが、上空で崩壊・気化する場合でも地上に被害が生じることがあります。2013年にロシアのチェリャビンスク州上空で爆発した天体のサイズは10m前後と推定されていますが、エアバースト(強力な爆風)が発生したことで多数の負傷者や建物の被害がもたらされました。エアバーストは、有名な1908年の「ツングースカ大爆発」(天体のサイズは50~80mと推定)でも発生したと考えられています。

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研究グループは、約43万年前に南極で起きた天体衝突がエアバーストとクレーター形成の中間にあたる規模であり、チェリャビンスクやツングースカよりも危険な出来事だったと考えています。また、直径100mの天体に由来する高温の噴流が高速で地表に到達するようなケースについて、あまり研究が進んでいないとも研究グループは指摘しています。van Ginneken氏は「もしも南極ではなく人口密度の高い地域の上空で発生した場合、何百万人もの犠牲者と、最大数百kmに渡る深刻な被害がもたらされるかもしれません」とコメントしています。

 

Image Credit: Mark A. Garlick
Source: ケント大学
文/松村武宏

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