地球をかすめる小惑星を描いた想像図(Credit: ESA – P.Carril)

地球をかすめる小惑星を描いた想像図(Credit: ESA – P.Carril)

アメリカ航空宇宙局(NASA)は現地時間3月25日、たびたび地球に接近する小惑星「アポフィス(99942 Apophis)」について、少なくとも今後100年間は地球に衝突するリスクがないとする最新の分析結果を発表しました。アポフィスは数十年後にわずかな確率で衝突する可能性が指摘されていましたが、今回の発表はその可能性を否定するものとなります。

■最新の観測データによって2068年に衝突するわずかな可能性が否定される

小惑星や彗星といった小さな天体の軌道は、惑星への接近や「ヤルコフスキー効果」(※)などにより比較的短い期間で変化することがあります。地球に接近する軌道を描く「地球接近天体(NEO:Near Earth Object)」に分類される小惑星の場合、軌道が変化することで将来地球に衝突する可能性もあることから、正確な軌道を把握し続けるために観測が行われています。

※…太陽に温められた天体の表面から放射される熱の強さが場所により異なることで、天体の軌道が変化する効果のこと(Wikipedia:ヤルコフスキー効果

直径約340mのアポフィスは2004年に発見されて以来、NEOのなかでも特に衝突の危険性が高い「潜在的に危険な小惑星(PHA:Potentially Hazardous Asteroid)」の一つとして注視されています。アポフィスについては2029年や2036年に地球へ接近する際の衝突リスクはないとされていたものの、2068年に衝突する可能性は否定されておらず、NASAのジェット推進研究所(JPL)が管理する地球近傍天体研究センター(CNEOS)はその確率を15万分の1と見積もっていました。

関連:小惑星アポフィスの軌道変化を検出、2068年の衝突リスクに影響?

2021年3月上旬に実施されたアポフィスのレーダー画像(上段)。下段は上段の画像にアポフィスの位置を示す円を追加したもの。観測日は左から順に3月8日、9日、10日。解像度は1ピクセルあたり38.75m(Credit: NASA/JPL-Caltech and NSF/AUI/GBO)

2021年3月6日頃、アポフィスは地球から約1700万km(地球から月までの距離の約44倍)離れたところを通過していきました。NASAは今回の接近にあわせて深宇宙通信網「ディープスペースネットワーク」の通信アンテナ(送信用)とグリーンバンク天文台の電波望遠鏡(受信用)を組み合わせたレーダー観測を行い、通過していくアポフィスまでの距離を約150mの精度で観測することに成功したといいます。

最新のレーダー観測のデータをもとに軌道を分析した結果、2068年にアポフィスが衝突する可能性も否定されることとなりました。CNEOSのDavide Farnocchia氏は「(アポフィスが)2068年に衝突する可能性はもうありませんし、少なくとも今後100年間は衝突のリスクがないことを計算結果は示しています」と語ります。

なお、アポフィスは2029年4月13日に地球の静止軌道よりも低い高度約3万2000km以下を通過していくと予想されていて、一部地域からは通過するアポフィスを肉眼で見られるといいます。NASAはこの8年後の通過について差し迫った危険ではないとした上で、接近する小惑星を観測するまたとない機会になると期待を寄せています。

▲2029年4月13日に地球の近くを通過していくアポフィスの軌道(黄色)を示した動画▲
(Credit: NASA/JPL-Caltech)

 

Image Credit: NASA/JPL-Caltech and NSF/AUI/GBO
Source: NASA/JPL / グリーンバンク天文台
文/松村武宏

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