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天の川銀河の想像図(Credit: NASA/JPL-Caltech/R. Hurt )
天の川銀河の想像図(Credit: NASA/JPL-Caltech/R. Hurt )

NASAは2月9日、チャンドラX線観測衛星の観測データから、天の川銀河の中心部の近くにある「いて座Aイースト(Sagittarius A East=Sgr A East)」が珍しいタイプの超新星爆発の残骸であるとみられることが解ったと発表しました。

この珍しいタイプの超新星爆発はIaxと呼ばれ、このタイプの超新星爆発の残骸が天の川銀河内で発見されるのはこれが初めてとなります。

珍しいタイプの超新星爆発Iaxの残骸とみられる天の川銀河の中心部に存在する”いて座Aイースト”(Sagittarius A East)の画像。チャンドラX線観測衛星のデータから作成。(Credit: NASA/CXC/Nanjing Univ./P. Zhou et al. Radio: NSF/NRAO/VLA)
珍しいタイプの超新星爆発Iaxの残骸とみられる天の川銀河の中心部に存在する”いて座Aイースト”(Sagittarius A East)の画像。チャンドラX線観測衛星のデータから作成。(Credit: NASA/CXC/Nanjing Univ./P. Zhou et al. Radio: NSF/NRAO/VLA)

超新星爆発にはいくつか種類があります。Ia型II型です。

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II型の超新星爆発はみなさんおなじみの超新星爆発です。太陽の質量の8倍以上の質量の大きな恒星が、最期に大爆発を起こして、中性子星やブラックホールになる超新星爆発です。

これに対して、Ia型の超新星爆発は白色矮星が引き起こす超新星爆発です。

太陽の質量の1~8倍ほどの質量の恒星は、水素やヘリウムなどの核融合の燃料を使い果たすと、核融合が停止し、後には、核融合の燃えカスである炭素や酸素を主成分とする恒星のコアが剥き出しの形で残されます。これが白色矮星です。

この白色矮星に、伴星がある場合に、白色矮星は非常に引力が強いために、伴星の物質を引き寄せます。こうして、白色矮星の質量が増加していき、やがて一定の限界(太陽の質量の1.44倍)を超えると、炭素が核融合を起こして、白色矮星が吹っ飛びます。その明るさは太陽の30億倍にもなるといいます。これがIa型の超新星爆発です。

しかし、これまで、Ia型の超新星爆発とみられていた超新星爆発の中には、通常のIa型の超新星爆発とは、異なった比率で元素を生み出し、爆発もより弱いものがあることが、解ってきました。これがIax型の超新星爆発です。

その爆発のメカニズムについては、まだ議論が続いていますが、主に、通常のIa型に比べれば、白色矮星における、よりゆっくりと進行する核融合反応によるものだと考えられています。そのため、通常のIa型の超新星爆発に比べれば、爆発がより弱く、異なった比率で元素がつくられ、場合によっては、白色矮星の一部が残されることもありうると考えられています。

Ping Zhouさん率いる研究チームは、天の川銀河の中心にある巨大ブラックホール「いて座Aスター(Sgr A*)」とその周辺部分についてのチャンドラX線観測衛星の約35日間に及ぶ観測データから、いて座AイーストがこのようなIax型の超新星爆発の残骸であるとみられることを突き止めました。いて座Aイーストの元素の構成比がコンピューターモデルによって予測されるIax型の超新星爆発によってつくられる元素の構成比と一致したのです。

Iax型の超新星爆発が起こる頻度は、通常のIa型の超新星爆発が起こる頻度の1/3ほどと珍しく、天の川銀河内でIax型の超新星爆発の残骸が発見されたのはこれが初めてとなります。

 

Image Credit: NASA/CXC/Nanjing Univ./P. Zhou et al. Radio: NSF/NRAO/VLA
Source: NASA
文/飯銅重幸

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