若い星から噴き出すジェット、南天“ほ座”のハービッグ・ハロー天体

こちらは南天の「ほ座」(帆座)の方向およそ1400光年先にあるハービッグ・ハロー天体「HH 46/47」です。ハービッグ・ハロー(HH:Herbig-Haro)天体とは生まれたばかりの星の周囲にある星雲状の天体のことで、画像には写っていませんが、画像中央付近の暗い星雲の奥には原始星が存在しています。

ハービッグ・ハロー天体「HH 46/47」(Credit: ESA/Hubble & NASA, B. Nisini)
ハービッグ・ハロー天体「HH 46/47」(Credit: ESA/Hubble & NASA, B. Nisini)

欧州宇宙機関(ESA)によるとHH 46/47では原始星から秒速150km以上の速度で噴出した物質が差し渡し10光年ほどのジェットを形成しており、原始星周辺の物質と衝突することで輝いています。ジェットは数年単位で変化していて、その様子は1994年から2008年にかけて観測されたHH 46/47の連続画像にも現れています。

原始星はガスや塵が高い密度で集まった分子雲が自らの重力で収縮することで形成され始め、その周囲を取り巻くガスや塵の円盤から物質が流れ込むことで成長していくと考えられています。原始星が成長するにつれて円盤から物質がなくなるとジェットも止まるとみられており、噴出が続くのは数万年程度、分子雲の奥で星が誕生してからジェットの噴出が終わるまでの期間は数百万年程度だといいます。若い星とともにあるハービッグ・ハロー天体は、宇宙のスケールからすれば短命な天体です。

冒頭の画像は「ハッブル」宇宙望遠鏡の「広視野カメラ3(WFC3)」によって光学および赤外線の波長で観測されたもので、ESAからハッブル宇宙望遠鏡の今週の1枚として2021年2月15日付で公開されています。

 

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文/松村武宏

最終更新日:2023/10/23