NASAの火星周回探査機マーズ・リコネッサンス・オービターによって2008年3月23日に撮影された火星の衛星フォボスの画像。(Image Credit:NASA/JPL-Caltech/University of Arizona)
NASAの火星周回探査機マーズ・リコネッサンス・オービターによって2008年3月23日に撮影された火星の衛星フォボスの画像。(Image Credit:NASA/JPL-Caltech/University of Arizona)

NASAは2月2日、カリフォルニア大学のネノンさん率いる研究チームが、NASAの火星周回探査機MAVENの観測データを使って、火星の衛星フォボスのもっとも表層に、数十億年に渡って、火星の大気から流出した、炭素、酸素、窒素、アルゴンなどのイオンが、保存されている可能性があることを突き止めたと発表しました。そのサンプルを調べれば、なぜ火星は大気を失ったのかなど過去の火星の大気の進化について重要な情報が得られる可能性があります。そのため、研究チームでは、現在、JAXAが2020年代に予定している火星衛星探査計画に大きな期待を寄せています。JAXAの火星衛星探査計画ではフォボスやダイモスなどの火星の衛星からのサンプルリターンが予定されているためです。

火星には2つの衛星があります。フォボスダイモスです。

このうち、フォボスは、大きさ13km×11km×9kmほどで、火星から9400kmほどのところを公転しています。これは地球と月の距離の1/60ほどのところを公転していることになります。

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このように、フォボスは、火星のとても近くを公転しているために、火星の大気から流れ出したイオンを浴びている可能性があります。

そこで、研究チームは、火星を周回しながら、火星の大気とその宇宙への流出を調べている、NASAの火星周回探査機MAVENの4年分以上にも及ぶ観測データを詳しく分析しました。MAVENは、主要なミッション中には、1日(地球時間で)に5回ほども、フォボスの軌道を横切ります。

すると、フォボスはやはり火星の大気から流れ出したイオンを浴びていることが解りました。特に、フォボスは、火星に対して潮汐ロックされ、常に火星に同じ側を向けて、公転していますが、その常に火星に向けている側では、反対側に対して、20~100倍も多くイオンを浴びていることが解りました。

そのため、研究チームによれば、フォボスのもっとも表層には、特に常に火星に向けている側には、数十億年に渡って、火星の大気から流出した、炭素、酸素、窒素、アルゴンなどのイオンが、埋め込まれ、保存されている可能性があるといいます。

現在、日本のJAXAは、2020年代前半の打ち上げを目指して、火星の衛星からのサンプルリターン計画、火星衛星探査計画を進めています。

研究チームでは、この火星探査計画によって、地球に持ち帰られたフォボスのサンプルを分析することで、なぜ火星は大気を失ったのかなど過去の火星の大気の進化について、重要な情報が得られるのではないかと期待しています。

 

Image Credit: NASA/JPL-Caltech/University of Arizona
Source: NASA/論文
文/飯銅重幸

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