左:第24太陽活動周期の極大期を迎えた2014年4月の太陽。右:第25太陽活動周期の開始を告げる極小期を迎えた2019年12月の太陽(Credit: NASA/SDO)

左:第24太陽活動周期の極大期を迎えた2014年4月の太陽。右:第25太陽活動周期の開始を告げる極小期を迎えた2019年12月の太陽(Credit: NASA/SDO)

チューリッヒ工科大学のNicolas Brehm氏らの研究グループは、木の年輪に含まれている炭素の放射性同位体をもとに、10世紀から20世紀までの約1000年間に渡る太陽活動を再現することに成功したとする研究成果を発表しました。研究グループによると、現代社会を脅かしかねない強力な太陽フレアが従来の想定よりも頻繁に発生する可能性があるようです。

太陽の長期的な活動の変化は黒点の記録をもとに辿ることができ、およそ11年周期で変化する太陽活動周期の存在が明らかになっています。ただ、黒点の詳細な記録は望遠鏡が発明された17世紀以降の約400年間に限られていて、研究グループはそれ以前の太陽活動の変遷を再構築するのは困難だったと指摘します。

今回、研究グループはイングランドとスイスの年輪記録をもとに、年輪に含まれている炭素の放射性同位体「炭素14」の濃度を調べました。地球上に一番多く存在する炭素の質量数は12ですが、質量数が14の放射性同位体である炭素14もわずかながら存在します。樹木は二酸化炭素を内部に取り込みますが、そのなかには炭素14からなる二酸化炭素も含まれていて、年輪には炭素14の痕跡が残ります。

地球の自然界に存在する炭素14は主に地球の大気へ飛来した宇宙線によって生成されますが、大規模な太陽フレアの発生にともなう太陽プロトン現象(地球に飛来する高エネルギーの陽子が増加する現象)によって生成される可能性も指摘されています。地球に飛来する宇宙線の強さも太陽活動の強弱にともない変化するため、年輪中の炭素14濃度は黒点の記録が始まる前の時代の太陽活動を調べる手段として活用されています。日本の屋久杉を用いた過去の研究では、西暦774~775年と993~994年に炭素14が急増していたことが判明しました。

今回Brehm氏らは最新の加速器質量分析法を用いて西暦969年から1933年までの約1000年間に渡る太陽活動の1年単位での連続的な復元に成功。太陽活動の11年周期が継続してきたことや、太陽活動が低調な時期には11年周期の振れ幅も小さくなることが明らかになったことに加えて、屋久杉の年輪記録から見つかった993年の太陽プロトン現象とみられる出来事も再確認されています。

研究グループによると、すでに知られていた西暦993年の出来事とは別に、1052年と1279年にも炭素14が増加していたことが今回の分析によって判明したといいます。発表では、情報化が進んだ現代社会にとって脅威となる強力な太陽フレアが従来の想定よりも高い頻度で発生することが示された可能性があると指摘しています。

太陽フレアは時として人類の活動に影響を及ぼすことがあります。たとえば1859年9月に発生した通称「キャリントン・イベント」と呼ばれる大規模なフレアは、当時欧米で普及していた電信網に被害をもたらしました。このような規模のフレアが通信網や電力網の発達した現代において発生した場合、甚大な被害が生じるとも予想されています。研究者らは近い将来、最終氷期が終わりを迎えたおよそ1万年前まで遡り、炭素14濃度の変化を年単位で分析したいと考えています。

 

関連:第25太陽活動周期の開始を確認。極小期は2019年12月だった

Image Credit: NASA/SDO
Source: チューリッヒ工科大学
文/松村武宏

 オススメ関連記事