およそ100億年前に形成されたとみられる古い星に3つの系外惑星を発見
恒星TOI-561(右)と高温な岩石質の惑星TOI-561b(中央)、2つのガス惑星TOI-561cとTOI-561d(左)を描いた想像図(Credit: W. M. Keck Observatory/Adam Makarenko)
恒星TOI-561(右)と高温な岩石質の惑星TOI-561b(中央)、2つのガス惑星TOI-561cとTOI-561d(左)を描いた想像図(Credit: W. M. Keck Observatory/Adam Makarenko)

ハワイ大学のLauren Weiss氏らの研究グループは、天の川銀河を構成する星々のなかでも古い恒星のひとつにおいて、地球に近いサイズを含む3つの太陽系外惑星が見つかったとする研究成果を発表しました。これらの系外惑星は誕生から100億年前後が経っているとみられています。

研究グループが発見したのは「ろくぶんぎ座」の方向およそ280光年先にある星「TOI-561」を周回する3つの系外惑星「TOI-561b」「TOI-561c」「TOI-561d」です。TOI-561は直径と質量がどちらも太陽のおよそ8割で、表面温度は太陽よりも数百度低い摂氏およそ5000度とされる恒星です。

発見された系外惑星の直径と公転周期を内側から順に見ていくと、TOI-561bは地球の約1.45倍で公転周期は0.44日、TOI-561cは地球の約2.90倍で公転周期は10.8日、TOI-561dは地球の約2.32倍で公転周期は16.3日とされています。

研究グループはアメリカ航空宇宙局(NASA)の系外惑星探査衛星「TESS」の観測データから3つの系外惑星を見出し、ハワイのW.M.ケック天文台による観測で直径、質量、密度などを分析しました。3つのうち一番内側のTOI-561bは地球の約3.2倍の質量がある岩石質の惑星と考えられていますが、主星に近いことから表面温度は摂氏およそ1700度を超えていると推定されています。また、外側のTOI-561cとTOI-561dはガス惑星とみられています。

天の川銀河には多くの星々が集まった中央の「バルジ」、バルジを取り巻く扁平な「円盤」、バルジと円盤を球状に取り囲む希薄な「ハロー」といった構造があります。このうち円盤は古い星が多くて厚みのある「厚い円盤(thick disk)」と、そのなかにある新しい星が多くて薄い「薄い円盤(thin disk)」に分けられることが知られています。

今回研究グループが発見した系外惑星が存在する恒星TOI-561は厚い円盤に属する古い星で、形成されてから100億年前後が経っているとみられています。Weiss氏はTOI-561bについて、これまでに見つかった岩石質の系外惑星でも最も古いものの一つだとしています。

初期の宇宙に存在していた元素のほとんどは水素とヘリウムで、金属(水素やヘリウム以外の元素)は恒星内部の核融合超新星爆発によって生成され、次第にその量が増えていったとみられています。そのため、古い星であるTOI-561と今回発見された系外惑星は金属の量が少なく、地球と比較したTOI-561bは岩が多くて鉄が少ないと研究グループは結論付けています。

研究グループは今回の成果を踏まえて、天の川銀河を構成する古い星の周囲でも岩石質の系外惑星が見つかるようになるかもしれないと期待を寄せています。

 

Image Credit: W. M. Keck Observatory/Adam Makarenko
Source: ハワイ大学 / カリフォルニア大学リバーサイド校 / W.M.ケック天文台
文/松村武宏

最終更新日:2021/01/12