神秘的な美しさ。“おおいぬ座”に輝く棒渦巻銀河

こちらは「おおいぬ座」の方向にある棒渦巻銀河「NGC 2217」です。地球からの距離はおよそ6500万光年、銀河円盤の直径は天の川銀河と同じ10万光年ほどとされています。暖かみを感じる色合いの中央部分を青みがかった淡い渦巻腕がきつく取り囲むその姿は、ずっと眺めていたくなるような神秘的な美しさを感じさせます。

棒渦巻銀河「NGC 2217」(Credit: ESA/Hubble & NASA, J. Dalcanton)
棒渦巻銀河「NGC 2217」(Credit: ESA/Hubble & NASA, J. Dalcanton)

数多くの星々が集まっている中央の銀河バルジを渦巻腕が取り囲む構造を持つ渦巻銀河のうち、中心部分に棒状の構造がみられるものは棒渦巻銀河に分類されています。地球に対して正面(真上もしくは真下)を向けた位置関係にあるNGC 2217は、中央の棒状構造や銀河円盤にある渦巻腕の様子を観測しやすい銀河です。

星の色は表面温度や年齢と関係があり、NGC 2217の黄色っぽいバルジや棒状構造には古い星が多いことがわかります。いっぽう中心から離れた渦巻腕の青い色合いは、そこで若い高温の星々が誕生していることを示しています。

棒渦巻銀河の特徴である棒状構造は、銀河円盤から中心に向かってガスが流れ込むのを助けることで、銀河の進化において重要な役割を果たしていると考えられています。中央部分に運ばれたガスや塵は新たに形成される星の材料になったり、大半の銀河の中心に存在するとされる超大質量ブラックホールに供給されたりするとみられています。

冒頭の画像は「ハッブル」宇宙望遠鏡の「掃天観測用高性能カメラ(ACS)」によって可視光線と近赤外線の波長で観測されたもので、欧州宇宙機関(ESA)からハッブル宇宙望遠鏡の今週の一枚として2020年12月28日付で公開されています。なお、色の情報には掃天観測プロジェクト「Pan-STARRS(パンスターズ)」の観測データが用いられています。

 

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Image Credit: ESA/Hubble & NASA, J. Dalcanton
Source: ESA/Hubble
文/松村武宏