ハッブル宇宙望遠鏡が2020年1月に撮影した海王星(Credit: NASA, ESA, STScI, M.H. Wong (University of California, Berkeley) and L.A. Sromovsky and P.M. Fry (University of Wisconsin-Madison))

ハッブル宇宙望遠鏡が2020年1月に撮影した海王星(Credit: NASA, ESA, STScI, M.H. Wong (University of California, Berkeley) and L.A. Sromovsky and P.M. Fry (University of Wisconsin-Madison))

こちらは「ハッブル」宇宙望遠鏡によって2020年1月に撮影された海王星の姿です。太陽から約30天文単位(※)離れた軌道を公転する海王星は、冥王星が惑星から準惑星に分類されるようになって以来、太陽系で最も外側を周回する既知の惑星として知られています。

※…1天文単位=約1億5000万km。太陽から地球までの平均距離に由来する

画像の中央上には幅およそ7400kmの「暗斑」が写っています。1989年に海王星をフライバイした惑星探査機「ボイジャー」2号によって初めて観測された暗斑は消滅と出現を繰り返していて、ここに写っているのは1993年以来ハッブル宇宙望遠鏡が4番目に発見した暗斑となります。

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この暗斑も今まで発見されたものと同様に消滅すると考えられていましたが、その予測を覆し新たな謎をもたらしたことで研究者を驚かせています。

ハッブルを運用するアメリカの宇宙望遠鏡科学研究所(STScI)によると、高気圧の渦である海王星の暗斑は中緯度で形成された後に赤道へ向かって移動していくといいます。暗斑はコリオリの力の作用で回転しつつ安定して存在していますが、赤道へ近づくにつれてコリオリ力が弱まるためにやがて崩れて消滅します。

ところが、冒頭の画像に写る暗斑は2018年9月の発見から1年後の観測において赤道に向かって南下していることが示されたものの、北へ向かってUターンしたことが2020年8月までに確認されたといいます。カリフォルニア大学バークレー校のMichael H. Wong氏は「今まで観測されたことがないプロセスです」と語ります。

暗斑が進路を反転させたのは冒頭の画像が撮影された2020年1月頃とみられていますが、そのころ暗斑の赤道側に幅およそ6200kmの別の暗斑が出現。冒頭の画像でも中央上に見える暗斑の右側に、新しい暗斑がうっすらと写っています。

Wong氏は当初「暗斑が崩れつつある」と考えていたといいますが、新たに出現した暗斑が数か月後に消滅したいっぽうで、もとからあった暗斑は北に反転して赤道を離れていきました。Wong氏は、新たに出現した暗斑はもとからあった暗斑の一部が断片化したものであり、赤道への移動が食い止められたことと関係しているかもしれないと予想していますが、2つの暗斑の関連性を「証明することはできません」ともコメントしています。

また、2018年に発見された頃の暗斑は周囲にメタンの氷の結晶でできた白い雲をともなっていましたが、暗斑が北に反転した頃にこの雲は消滅したとみられています。研究者らはこの雲の消滅が暗斑の進化についての情報をもたらしてくれるかもしれないと考えています。

冒頭の画像はハッブル宇宙望遠鏡の「広視野カメラ3(WFC3)」による観測データをもとに作成されたもので、STScIから2020年12月15日付で公開されています。

ハッブル宇宙望遠鏡が2018年9月に撮影した海王星。中央上の暗斑周辺に白い雲が写っている(Credit: NASA, ESA, and A. Simon (NASA Goddard Space Flight Center), and M. Wong and A. Hsu (University of California, Berkeley))

ハッブル宇宙望遠鏡が2018年9月に撮影した海王星。中央上の暗斑周辺に白い雲が写っている(Credit: NASA, ESA, and A. Simon (NASA Goddard Space Flight Center), and M. Wong and A. Hsu (University of California, Berkeley))

 

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Image Credit: NASA, ESA, STScI, M.H. Wong (University of California, Berkeley) and L.A. Sromovsky and P.M. Fry (University of Wisconsin-Madison)
Source: STScI
文/松村武宏

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