X線観測装置「eROSITA」によって観測されたX線の一部(0.6~1.0keV)を用いた全天マップ。天の川銀河の中心(中央)から南北(上下)に広がる泡状構造が捉えられている(Credit: MPE/IKI)

X線観測装置「eROSITA」によって観測されたX線の一部(0.6~1.0keV)を用いた全天マップ。天の川銀河の中心(中央)から南北(上下)に広がる泡状構造が捉えられている(Credit: MPE/IKI)

マックス・プランク地球外物理学研究所のPeter Predehl氏らの研究グループは、2019年に打ち上げられたX線宇宙望遠鏡「Spektr-RG」による観測の結果、天の川銀河に差し渡し10万光年近い砂時計型の巨大な泡状構造が見つかったとする研究成果を発表しました。

人の目は電磁波のごく一部の波長を可視光線として捉えますが、赤外線や紫外線、電波、X線、ガンマ線といった人の目に見えない波長を用いることで、天体の真の姿を観測することができます。

2020年6月、Spektr-RGに搭載されているドイツ製のX線観測装置「eROSITA(extended ROentgen Survey with an Imaging Telescope Array)」によるX線全天マップが公開されました。このマップには、人が直接見ることのできない天の川銀河のX線天体巨大な構造が見事に描き出されています。Predehl氏らによると、eROSITAはこの観測において天の川銀河の中心から北と南に広がる砂時計型の巨大な泡状構造(バブル)を捉えたといいます。

関連:X線宇宙望遠鏡「Spektr-RG」によって取得されたX線全天マップが公開

eROSITAが観測したX線の一部(0.6~1.0keV)のデータを用いて作成された冒頭の全天マップには、南北に対をなす泡状構造が現れています。このうち天の川銀河の北に広がる泡状構造の一部は「北極スパー(North Polar Spur、ノースポーラースパー)」としてすでに知られていて、太陽系に比較的近い場所にある超新星残骸か、あるいは天の川銀河の中心で起きた爆発現象などによって生じた巨大なループ構造ではないかと考えられてきました。

同じような砂時計型の泡状構造は、2010年にガンマ線宇宙望遠鏡「フェルミ」の観測によって発見された「フェルミバブル」が知られています。研究グループによると、今回eROSITAがX線で捉えた泡状構造はガンマ線で観測されたフェルミバブルよりも大きく広がっており、片方の長さは天の川銀河の中心から最大約4万5000光年(14キロパーセク)に達するといいます。南北の泡状構造を合わせた長さは、約10万光年とされる天の川銀河の円盤部の直径にも匹敵する大きさです。

eROSITAが捉えた泡状構造(黄色)、フェルミバブル(桃色)、天の川銀河の円盤部(緑色、渦巻腕として表現)を示した模式図。太陽系の位置は赤色の印、天の川銀河中心にあるとされる超大質量ブラックホール「いて座A*」の位置は★印で示されている(Credit: MPE)

発表によると、こうした泡状構造は天の川銀河の中心で発生した大規模な爆発現象によって放出された、超新星爆発10万回分に匹敵するエネルギーによって形成されたことが考えられるといいます。eROSITA主任研究員のAndrea Merloni氏は「研究者はそのような激しい活動が残した痕跡を数多くの銀河の周囲に探し求めてきました」とコメントしています。

なお、eROSITA による全天の観測を6か月ごとに行っているSpektr-RGはすでに2回目の全天観測を終えているといい、過去の天の川銀河の中心で起きた爆発現象の解明につながることが期待されます。

 

Image Credit: MPE
Source: マックス・プランク研究所
文/松村武宏

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