40億年前、火星のゲール・クレーターを巨大な洪水が襲ったことが判明
NASAの火星探査車キュリオシティの画像。火星のゲール・クレーターを中心に探査している(Image Credit:NASA/JPL-Caltech/MSSS)

アメリカのコーネル大学、NASAのジェット推進研究所(JPL)などの研究チームは11月5日、40億年ほど前に火星の赤道付近にある直径154kmほどの”ゲール・クレーター”を巨大な洪水が襲っていたことが解ったと発表しました。研究チームは、NASAの火星探査車キュリオシティの画像データを使い、ゲール・クレーターの地質を詳しく分析することによって、これを突き止めました。

研究チームによれば、この巨大な洪水の水深は少なくても24mはあり、時速36km(10m/s)で押し寄せたといいます。24mというと、ほぼ8階建てのマンションの高さに匹敵します。

では、なぜこのような巨大な洪水が発生したのでしょうか?

研究チームが最も可能性が高いと考えているのは次のようなシナリオです。

40億年ほど前に巨大な隕石が火星に衝突しました。当時、火星は冷たく乾燥した気候でしたが、この巨大な隕石の衝突により発生した熱によって、火星の表面を覆っていた氷河(水の氷)が溶け、大量の水蒸気が発生しました。そして、この大量に発生した水蒸気によって、全火星規模で集中豪雨が発生し、巨大な洪水が発生したというわけです。

研究チームによれば、この巨大な隕石の衝突は、同時に、凍っていた二酸化炭素やメタンなども溶かし、二酸化炭素やメタンなどの温室効果ガスも大量に発生させました。そのため、前述の水蒸気と相まって、その後、しばらくの間、火星の気候は温暖で湿潤だったと考えられるといいます。ただ、この温暖で湿潤な気候がどれくらい続いたのかについては、まだよく解っていません。

それにしても、巨大隕石の衝突が、しばらくの間、火星に温暖で湿潤な気候をもたらしたかもしれない、というのはとても面白いですよね。

マーズ・エキスプレスとマーズ・リコネッサンス・オービター、バイキングの撮影データを合成して作成したゲール・クレーターの画像。中央左上にある黒色の楕円マークはキュリオシティの着陸ポイント(Credit: NASA/JPL-Caltech/ESA/DLR/FU Berlin/MSSS)

 

Image Credit: NASA/JPL-Caltech/MSSS
Source: コーネル大学論文
文/飯銅重幸