こちらは火星の南半球、アルギル平原の東端に位置するガレ・クレーター(直径約230km)とその周辺を捉えた画像です。1999年3月にNASAの火星探査機「マーズ・グローバル・サーベイヤー(MGS)」によって撮影されました。クレーター内部にある円弧状に連なる山などの地形がまるで笑顔を表しているように見えることから「Happy Face(ハッピー・フェイス)」クレーターとも呼ばれています。
ハッピー・フェイス・クレーターが発見されたのは、1976年に火星へ到着したNASAの火星探査機「バイキング1号」のオービター(軌道船)による観測が行われた時でした。2006年にはESA(欧州宇宙機関)の火星探査機「マーズ・エクスプレス」によって撮影された、より精細なハッピー・フェイス・クレーターの画像が公開されています。
■火星の北半球にはミステリアスな「顔」も
ところで、バイキングが撮影した「顔」といえば、この画像を思い浮かべる人も少なくないのではないでしょうか。
こちらは火星の北半球、アキダリア平原とアラビア大陸の境界に位置するシドニア地域の一部をバイキング1号が1976年7月に撮影した画像なのですが、中央上に人の顔をかたどったような地形が写っています。「Face on Mars(火星の顔)」、国内では「火星の人面岩(人面像)」として知られるこの地形は、地球外知的生命体や過去に火星へ渡った人類によって作られたとする説まで登場しました。
実際にはこの地形は人工物ではなく自然物であり、バイキング1号が撮影した「顔」は光と影による偶然の産物だったことが、後に送り込まれた火星探査機の観測によって判明しています。こちらはマーズ・エクスプレスの観測データをもとに再現された画像ですが、人面岩とされた地形は幾つかのピークを持った山塊であることがわかります。
自然によって偶然にも生み出されたガレ・クレーターとシドニア地域の「顔」。月や火星をめぐる観光旅行が夢ではなくなるような時代には、これら火星の顔が人気の観光スポットになるのかもしれません。
関連:NASAの探査機「マーズ・リコネッサンス・オービター」が撮影し続けてきた火星の素顔
Image Credit: NASA/JPL/MSSS
Source: NASA/JPL / ESA (1) / ESA (2)
文/松村武宏