■今日の天体画像:エンケラドゥスの赤外線全球画像

土星探査機「カッシーニ」の観測データをもとに作成されたエンケラドゥスの赤外線全球画像(Credit: NASA/JPL-Caltech/University of Arizona/LPG/CNRS/University of Nantes/Space Science Institute)

こちらは土星探査機「カッシーニ」による赤外線の波長を使った観測データをもとに作成された、土星の衛星エンケラドゥスの全球画像です。まるでキャンディーやアイスクリームのような色合いですが、画像の色は波長に応じて擬似的に着色されたものとなります(青色:1.8μm、緑色:2.0μm、赤色:3.1μmと1.65μmの比)。

画像は上段左がエンケラドゥスの進行方向の半球、上段中央が土星に面している半球、上段右が進行方向とは反対側の半球を示しています。地球の月と同じように、エンケラドゥスは常に同じ面を土星に向けながら公転しているため、進行方向やその反対側にもいつも同じ面が向いています。下段は左が北半球、右が南半球です。

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エンケラドゥスの南極周辺には「タイガーストライプ」と呼ばれる氷の地殻に平行に生じた亀裂が存在しており、地下の海からの水蒸気や氷の粒が噴出しているとみられています。下段右(南半球)の画像を見ると、タイガーストライプ周辺の表面が新しい氷に覆われていることを意味する赤色で示されていることがわかります。

いっぽう、上段左(進行方向の半球)の画像に示されているように、北半球にもやや赤い領域が広がっていることが判明しました。これは北半球の一部も表面の氷が比較的新しいことを意味します。画像を作成した研究グループの一員であるナント大学のGabriel Tobie氏は「おそらく地質学的な意味でそう遠くない時代に活動していたのでしょう」とコメントしています。

冒頭の画像はカッシーニに搭載されていた「可視・赤外マッピング分光光度計(VIMS:Visible and Infrared Mapping Spectrometer)」による観測データをもとに作成されました。1997年に打ち上げられて2004年に土星へ到着したカッシーニは13年間観測を続けた後に、水の噴出が確認されたことで生命存在の可能性が浮上したエンケラドゥスや土星の別の衛星タイタンに落下するリスクを避けるため、2017年9月に土星の大気圏へ突入してミッションを終えています。

カッシーニによって紫外線、可視光線、赤外線の波長で観測されたエンケラドゥス(疑似カラー)。画像の下のほうに見える、平行に走る数本の青い筋が「タイガーストライプ」と呼ばれる亀裂(Credit: NASA/JPL/Space Science Institute)

 

関連:エンケラドゥス、生命存在の可能性高まる。噴出した水溶性の有機化合物を発見

Image Credit: NASA/JPL-Caltech/University of Arizona/LPG/CNRS/University of Nantes/Space Science Institute
Source: NASA/JPL
文/松村武宏

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