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白色矮星は、質量が太陽の8倍以下の恒星が赤色巨星を経て進化の末に辿り着く姿とされています。自ら核融合を起こすことはなく予熱で輝く天体なので、恒星としては死を迎えた姿ともいえます。今回、恒星が白色矮星へと進化する過程で破壊されずに生き延びたとみられる太陽系外惑星候補が見つかったとする研究成果が発表されています。

■直径は木星とほぼ同じで質量は木星の約14倍以下、主星より7倍も大きなサイズ

白色矮星「WD 1856」(左手前)を周回する系外惑星候補「WD 1856 b」(奥)を描いた想像図(Credit: NASA’s Goddard Space Flight Center)

ウィスコンシン大学マディソン校のAndrew Vanderburg氏らの研究グループは、「りゅう座」の方向およそ80光年先にある白色矮星「WD 1856+534」(以下「WD 1856」)を周回する木星サイズの天体「WD 1856 b」が見つかったとする研究結果を発表しました。

白色矮星WD 1856は2つの赤色矮星とともに3連星を成しており、およそ60億年前に白色矮星になったとみられています。質量は太陽の半分ほどあるものの、直径は地球の約1.4倍しかない高密度な天体です。

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研究グループによると、今回見つかった系外惑星候補WD 1856 bはWD 1856を約34時間の周期で公転しています。直径は木星とほぼ同じであるため、主星であるWD 1856より7倍ほど大きいことになります。質量は木星の13.8倍以下とみられており、惑星よりも重いが水素の核融合が続くほどには重くない褐色矮星の可能性も残されていることから、系外惑星「候補」とされています。

恒星が赤色巨星に進化すると近くを周回していた惑星は飲み込まれてしまうため、WD 1856 bはもともと主星から離れた軌道(現在より少なくとも50倍遠く)を周回していたものの、主星が白色矮星になった後に現在の軌道まで移動してきたのではないかと考えられています。研究グループによると、これまでにも白色矮星の周囲では破壊された惑星の残骸とみられる天体は検出されてきましたが、WD 1856 bのように主星が白色矮星へと進化する過程で破壊されなかった系外惑星候補が見つかったのは初めてのことだといいます。

■白色矮星を周回する系外惑星から生命の兆候が見つかるかも?

研究グループは今回の発見について、白色矮星の周囲にも生命が居住可能な系外惑星が存在する可能性を示唆するものだと言及しています。

白色矮星は誕生当初こそ摂氏10万度近い高温で輝くものの、その温度は徐々に下がっていきます。表面温度は誕生から20億年後には摂氏およそ5700度まで低下し、さらに80億年ほどかけて摂氏およそ3700度まで下がると考えられています。研究グループによると、温度は恒星並みでも白色矮星が放出する光のエネルギーは小さいため、仮に白色矮星を10時間以下の周期で公転する岩石質の系外惑星が存在するとした場合、その惑星は数十億年に渡って生命が居住可能な状態が保たれ得るといいます。

今回のWD 1856 bの発見により、恒星が白色矮星へと進化する過程において惑星が破壊されずに生き残る可能性が示されました。WD 1856 bは木星のようなガス惑星の可能性が高いとみられていますが、同じように生き延びて白色矮星のすぐ近くまで移動した岩石質の系外惑星がどこかに存在するかもしれません。

コーネル大学のThea Kozakis氏らは今年、白色矮星を周回する地球に似た系外惑星の大気組成が観測可能かを検討した研究成果を発表しました(関連記事)。Kozakis氏らの研究と今回の研究の両方に参加した同大学のLisa Kaltenegger氏によると、2021年10月に打ち上げ予定の「ジェイムズ・ウェッブ」宇宙望遠鏡であれば、酸素オゾンメタンといった生命活動に関わる分子を検出できるといいます。

太陽も、数十億年後には白色矮星になると考えられています。Kaltenegger氏は「恒星の死が生命の終わりを意味するものではないとしたら? 太陽が死んでも生命は存在し続けるのでしょうか? 白色矮星を周回する系外惑星に生命の兆候が見つかったとしたら、それは生命の驚異的な粘り強さを示すものだけでなく、私たち地球の生命の将来を垣間見せるものでもあるでしょう」とコメントしています。

 

関連:新型宇宙望遠鏡は、地球外生命体の痕跡を発見できるかもしれない

Image Credit: NASA’s Goddard Space Flight Center
Source: NASA/JPL / コーネル大学 / ジェミニ天文台 / 自然科学研究機構アストロバイオロジーセンター
文/松村武宏

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