2重の棒状構造と大きな渦巻腕が見事な南天の棒渦巻銀河

■今日の天体画像:棒渦巻銀河「NGC 1365」

可視光線で観測された棒渦巻銀河「NGC 1365」全体の様子(Credit: ESO)

こちらは南天の「ろ(炉)座」の方向およそ5600万光年先にある棒渦巻銀河「NGC 1365」です。円盤部の幅は天の川銀河の2倍に相当する約20万光年とみられています。星々が集まった明るいバルジを中心に左右に伸びる棒状の構造と2本の大きな渦巻腕を持つ、見事な姿が捉えられています。

NGC 1365の棒状の構造は、渦巻腕をつなぐ大きな部分中心付近にある小さな部分から成る2重の構造をしています。これは銀河の回転や星々の複雑な力学の複合的な効果によって生じたと考えられており、内側の小さな棒状構造はより速く回転している可能性が指摘されています。このような2重の棒状構造は棒渦巻銀河のなかでもめずらしいとされており、NGC 1365は「Great Barred Spiral Galaxy」とも呼ばれています。赤外線で撮影された次の画像では、可視光線では塵に隠されていて見えない部分の様子も捉えられています。

赤外線で観測された棒渦巻銀河「NGC 1365」全体の様子(Credit: ESO/P. Grosbøl)

渦巻腕に沿って見えている光点のほとんどは単一の星ではなく星々が集まった星団で、それぞれの星団には数百から数千の明るく若い星が含まれているといいます。また、中心核の近くで渦巻くように集まっているガスや塵からも多くの星々が誕生しているとみられています。下の画像では、NGC 1365の中心付近にあるガスと塵が可視光線と赤外線で捉えられています。

3点の画像はヨーロッパ南天天文台(ESO)のパラナル天文台にある「超大型望遠鏡(VLT:Very Large Telescope)」の観測装置「FORS1」(1つ目の画像)、「HAWK-I」(2つ目の画像)および「MUSE」(3つ目の画像)を使って撮影されたものです。

可視光線と赤外線で観測された棒渦巻銀河「NGC 1365」中心付近の様子(Credit: ESO/TIMER survey)

 

Image Credit: ESO
Source: ESO-1 / ESO-2
文/松村武宏