国際宇宙ステーション(ISS)日本実験棟「きぼう」

国際宇宙ステーションの日本実験棟「きぼう」。向かって左側、箱状の装置などが数多く取り付けられている部分が船外実験プラットフォーム(Credit: JAXA/NASA)

東京薬科大学の山岸明彦氏らの研究グループは、国際宇宙ステーション(ISS)日本実験棟「きぼう」において実施された微生物曝露実験の結果、微生物が宇宙空間で紫外線に当たる条件で数年間、紫外線が当たらなければ数十年間生存できることが明らかになったとする研究成果を発表しました。

■微生物は惑星間の移動を乗り越えられるかも

宇宙のある場所で誕生した生命が宇宙空間を移動して別の場所へ移動する可能性を示した「パンスペルミア」という説があります。

山岸氏らはこのパンスペルミア説を検証するために、地球の生命が惑星間を移動する可能性を探ることなどを目標とした、宇宙航空研究開発機構(JAXA)と東京薬科大学の共同研究「たんぽぽ計画」において、放射線に耐性を示す細菌デイノコッカス・ラジオデュランスDeinococcus radiodurans)の菌体の塊を太陽の紫外線が当たる宇宙空間に曝露する実験を「きぼう」の船外実験プラットフォームに設置された「簡易曝露実験装置(ExHAM)」で3年間に渡り実施しました。

1年、2年、3年後にそれぞれ回収されたサンプルを研究グループが調べたところ、厚さ0.5mm以上の塊は3年間の曝露後でも細菌が生存していたといいます。分析の結果、厚さ0.5mm以上の塊は「きぼう」船外実験プラットフォームの紫外線が当たる環境において15~45年、太陽光が当たらない暗い環境なら48年ほどの曝露に耐えると予想されています。

研究グループによると、デイノコッカス・ラジオデュランスの厚さ1mm以上の塊であれば、惑星間空間に2~8年間曝露されても耐えることが推定されるといいます。火星から地球へ、あるいは地球から火星へ自然現象で移動するには平均して数千万年の時間を要するとされていますが、最短では数か月~数年で移動することも可能であることから、研究グループは今回の実験によってパンスペルミア説を支持する結果が示されたといいます。

今後の課題として研究グループは、放射線から保護する役割を果たすヴァン・アレン帯の外側で微生物曝露実験を行うことで、パンスペルミア説のより良い検証が可能になるとしています。また、地球の生命の起源は火星で誕生した生命の可能性もあることから、今後の火星探査において生命の化石あるいは現存する生命が発見されれば、多くの情報が得られるはずだとしています。

簡易曝露実験装置に取り付けられた実験サンプル(左)と、簡易曝露実験装置を船外実験プラットフォームに設置する様子(右)(Credit: JAXA/NASA)

 

関連:東京大学、火星サンプルの微生物不活化技術を開発 新型コロナなど感染症対策への応用も期待

Image Credit: JAXA/NASA
Source: 東京薬科大学 / JAXA / JAXA/ISAS
文/松村武宏

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