オリオン座の赤色超巨星ベテルギウスは膨張と収縮を繰り返すことで明るさが変わる脈動変光星のひとつですが、2019年10月から2020年2月にかけての減光は急激だったため、超新星爆発が迫っているのではないかと話題になりました。
この減光現象はベテルギウスの表面に生じた巨大な黒点か、ベテルギウス自身が放出した塵の雲による現象だったのではないかという研究成果が発表されています。
一部が暗く見えるベテルギウスの表面をとらえた
ヨーロッパ南天天文台の「超大型望遠鏡(VLT)」を使って2019年1月と12月に撮影されたベテルギウスの画像を比較すると、12月に撮影されたベテルギウスの一部が暗く歪んだ様に見えることがわかります。2019年12月といえば、10月に始まった急激な減光が進行していた時期にあたります。
さて、この現象は一体何なのでしょうか?
表面に生じた巨大な黒点説
ある研究グループは、2019年12月に撮影されたベテルギウスの暗く歪んでいる様に見える部分が、表面の50パーセントから70パーセントを覆う巨大な黒点(恒星黒点)だったのではないかと考えています。周囲よりも温度が低い黒点が存在したことでベテルギウスの表面温度が平均して摂氏200度ほど下がり、減光につながったのではないかというのです。
太陽と置き換えれば水星から火星まで飲み込んでしまうといわれる巨大なベテルギウス。その表面の半分以上が覆われたというのですから、途方もない広さの黒点だったことになります。
大量のプラズマから形成された塵の雲説
いっぽう、別の研究グループは、地球から見たベテルギウスの一部が塵の雲に隠されたことで減光が観測されたのではないかと考えています。この研究グループは、ベテルギウスの南半球から放出された高密度かつ超高温のプラズマが時速およそ30万kmで外側に向けて移動する様子を、2019年10月から11月にかけてとらえています。
研究グループによると、ベテルギウスは太陽の3000万倍というペースで物質を放出していますが、この活動は通常の2倍に相当する質量の物質が南半球だけで放出された異例なものだったといいます。ベテルギウスの一部が隠されてしまうほどの塵の雲は、放出された大量のプラズマが冷えたときに形成されたとみられています。
すでに次の減光が観測されている
ベテルギウスの実視等級は、減光が始まる前の2019年9月頃は約0.6等でしたが、5か月間で1等級ほど暗くなり、2020年2月7日から13日にかけて約1.6等で底を打ちました。減光は2月中旬に止まり、4月にかけて増光に転じています。
ところが、NASAの太陽探査機「STEREO」が2020年6月下旬から8月上旬にかけてベテルギウスを観測したところ、4月よりも暗くなっていることが明らかになりました。
ベテルギウスが直近で最も暗くなった2020年2月から、約420日の周期を待たずに再び減光したことになります。
ベテルギウスはすでに超新星爆発の準備ができているとも予測されています。しかし、超新星爆発を起こす数週間前の恒星がどのようにふるまうのかは誰も知りません。私たちが生きているうちに爆発を見ることはない…とは言い切れないですね。