ハッブル宇宙望遠鏡が撮影したネオワイズ彗星

ハッブル宇宙望遠鏡が撮影したネオワイズ彗星(C/2020 F3)のコマ(Credit: NASA, ESA, Q. Zhang (California Institute of Technology), A. Pagan (STScI))

2020年3月27日にNASAの赤外線天文衛星「NEOWISE」によって発見された「ネオワイズ彗星(C/2020 F3)」。1997年春に地球へ接近した「ヘール・ボップ彗星(C/1995 O1)」以来、北半球から観測できる彗星としては最も明るくなったというネオワイズ彗星を「ハッブル」宇宙望遠鏡が8月8日にクローズアップ撮影しました。

直径4.8km以下とみられるネオワイズ彗星の核そのものは小さすぎて写っていませんが、画像には彗星の核から噴出したガスと塵でできた「コマ」と呼ばれる核を取り巻く大きな領域の一部(幅およそ1万8000kmの範囲)が捉えられています。

画像を見ると、中心付近から左右に向かってガスや塵が扇形に広がっていることがわかります。これは彗星核の表面下にある氷が太陽に温められて昇華し、ジェットとなって噴出した結果形成された構造で、核が自転するにつれてより幅広い形に変化するといいます。今回の発表では3時間間隔で撮影された2枚の画像を連続表示した以下の動画も公開されており、自転にあわせて変化する様子が捉えられています。

発表によると、太陽に再接近した後のこのように明るい彗星を、ハッブル宇宙望遠鏡がこれほどの高解像度で撮影したのは今回が初めてのことだといいます。過去の彗星でも撮影が試みられたものの、たとえば今年の5月に肉眼でも観測できることが期待された「アトラス彗星(C/2019 Y4)」は、太陽に再接近する前の4月の時点で彗星核が崩壊してしまいました。

いっぽう、ハッブル宇宙望遠鏡の観測データからは、ネオワイズ彗星の核は7月3日の太陽最接近を崩壊や断片化することなく乗り越えたことが示唆されるといいます。彗星を研究するQicheng Zhang氏(カリフォルニア工科大学)は「氷でできた彗星は壊れやすく、ネオワイズ彗星が太陽への最接近に耐えられるかどうか確信が持てませんでした」と語ります。

地上から撮影されたネオワイズ彗星

ハッブル宇宙望遠鏡が撮影した画像(右)の位置関係を示した図。彗星核を中心とした部分をクローズアップ撮影したことがわかる。背景は7月18日に地上から撮影されたネオワイズ彗星(Credit: NASA, ESA, Q. Zhang (California Institute of Technology), A. Pagan (STScI), and Z. Levay)

研究者たちは、彗星が太陽から遠ざかるにつれて塵の色が変化する様子を調べることで、塵の本来の性質を探ることを最終的な目標としています。Zhang氏は「優れた解像度を持つハッブル宇宙望遠鏡で核から噴出したばかりの塵の変化を観測することで、可能な限り彗星の元の性質に近い塵を調べることができます」とコメントしています。

太陽への最接近を終えたネオワイズ彗星は、太陽系の外側に向かって秒速60km以上の速度で遠ざかりつつあると推定されています。次に太陽へ近づくのは、およそ7000年後になるとのことです。

 

関連:次は5000年以上先のネオワイズ彗星、満点の星空を背景に巨大望遠鏡とのベストショット

Image Credit: NASA, ESA, Q. Zhang (California Institute of Technology), A. Pagan (STScI)
Source: ESA/Hubble / Hubblesite / Caltech
文/松村武宏

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