およそ138億年前に始まったとされる宇宙の歴史、その初期の頃の銀河は無秩序な姿をしていたと考えられてきましたが、最近では初期宇宙の銀河も比較的整った姿をしていたことを示す観測結果が得られ始めています。今回、チリの電波望遠鏡群「アルマ望遠鏡」の観測データをもとに、初期宇宙の銀河に備わっていた予想外の構造が明らかになったとする研究成果が発表されています。

■宇宙誕生から14億年の時点でバルジや円盤を備えた銀河が存在していた

初期宇宙の銀河「SPT0418-47」

アルマ望遠鏡の観測データをもとに本来の姿が再構成された初期宇宙の銀河「SPT0418-47」における炭素ガスの分布(Credit: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), Rizzo et al.)

私たちが住む天の川銀河をはじめとした渦巻銀河は、多数の天体が集まった中央部分の「バルジ(銀河バルジ)」と呼ばれるふくらみや、バルジを取り囲む「円盤(銀河円盤)」といった構造を持っています。いっぽう、初期の宇宙における形成途上の若い銀河は不安定で無秩序な姿をしていて、現在の宇宙に存在する銀河にみられるバルジや円盤のような構造は備わっていなかったと考えられてきたといいます。

Francesca Rizzo氏(MPA:マックス・プランク天体物理学研究所)らの研究グループは、今から120億年以上前、宇宙が誕生してから14億年ほどしか経っていない頃の銀河「SPT0418-47」を調べたところ、バルジや円盤といった構造を備えていたことが明らかになったとする研究成果を発表しました。Rizzo氏は「現在の宇宙における渦巻銀河に似た構造が当時すでに存在していたことを示す画期的な成果です」と語ります。

今年の5月、アルマ望遠鏡やアメリカの「カール・ジャンスキー超大型干渉電波望遠鏡群(VLA)」、それに「ハッブル」宇宙望遠鏡による観測結果をもとに、宇宙誕生からおよそ15億年の時点ですでに整った円盤銀河が存在していたとするMarcel Neeleman氏らの研究成果が発表されています。

今回発表されたRizzo氏らの研究成果はNeeleman氏らの成果に続くもので、初期宇宙の銀河には円盤だけでなくバルジも備わっていたことを示すものとなりました。研究に参加したSimona Vegetti氏(MPA)は「今回の予期せぬ成果は、銀河の進化を理解する上で重要な意味を持ちます」とコメントしています。

天の川銀河を描いた想像図

天の川銀河を描いた想像図。中央の明るい部分が「バルジ」、その周囲にあるのが「円盤」(Credit: NASA/JPL-Caltech/R. Hurt (SSC/Caltech))

関連:124億年前に整った円盤銀河が存在していた。アルマ望遠鏡の観測で判明

■アルマ望遠鏡と重力レンズの組み合わせで初期宇宙の銀河の構造を解明

重力レンズ効果を受けてリング状になっているSPT0418-47の像

重力レンズ効果を受けてリング状になっているSPT0418-47の像(Credit: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), Rizzo et al.)

はるか遠方にあって詳細な観測が難しい初期宇宙の銀河の構造を調べるために、研究グループは「重力レンズ」を利用しました。重力レンズとは、光源となる遠方の天体と地球の間にある別の銀河や銀河団の重力によって光源の像がゆがんで見える現象のこと。重力レンズによる効果を受けた光源の像はゆがむだけでなく拡大もされているため、観測データを適切に処理することで、重力レンズの効果を受けていなければ識別できないような特徴を調べることも可能となります。

今回研究グループが調べたSPT0418-47の場合、その像は手前にある別の銀河の重力によってリング状に見えています。アルマ望遠鏡による観測データをもとに、新しく開発したモデリング手法を使って研究グループがSPT0418-47の本来の姿を再構成した結果、らせん状の渦巻腕こそ確認されなかったものの、渦巻銀河のようなバルジや円盤の存在が判明しています。

▲リング状の像から本来の姿が再構成される様子を示した動画(Credit: ALMA (NRAO/ESO/NAOJ)/Martin Kornmesser (ESO))▲

 

関連:アルマ×重力レンズ。110億光年先のクエーサーを「視力9000」で観測

Image Credit: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), Rizzo et al.
Source: ESO / ALMA
文/松村武宏

 オススメ関連記事