■ガニメデの北極周辺にあるアモルファス氷を検出
こちらはNASAの木星探査機「ジュノー」に搭載されている「JIRAM」(Jovian Infrared Auroral Mapper、赤外線オーロラマッピング装置)によって撮影された、木星の衛星「ガニメデ」の北極を中心とした赤外線画像です。左端は2019年12月26日にジュノーがガニメデから約10万kmまで最接近した頃に撮影された画像で、これ以降20分間隔で撮影された4枚とあわせて合計5枚の画像が示されています。
ガニメデは水星よりも大きな衛星で、その直径は火星に次ぐ5268km。過去の観測によってガニメデが磁場を持つことも明らかになっています。これまでにも「ボイジャー」や「ガリレオ」といった探査機によってガニメデは撮影されてきましたが、北極域が撮影されたのは今回が初めてのこととされています。
撮影に用いられたJIRAMはもともと木星の内部から放射される赤外線を捉えるために作られた観測装置ですが、衛星の観測にも利用できることからジュノーのミッションチームはガニメデへの最接近にあわせて機体の姿勢を調整し、JIRAMを使ってガニメデ表面の赤外線画像を合計300枚撮影しています。
JIRAMの観測データからは、ガニメデの北極域に存在するアモルファス氷(非晶質氷)が検出されています。赤道付近に存在するような結晶質の氷ではなくアモルファス氷が分布している理由については、木星の磁気圏からガニメデの磁場に沿って地表まで飛来する荷電粒子の影響によって、水分子の結晶化が防がれているからだと考えられています。
なお、欧州宇宙機関(ESA)が主導し宇宙航空研究開発機構(JAXA)やNASAなどが参加する木星氷衛星探査計画「JUICE」では、2022年に打ち上げ予定の探査機によってエウロパ、ガニメデ、カリストの観測が計画されています。NASAのジェット推進研究所(JPL)では、今回のジュノーによるガニメデ北極域の観測データはJUICEのミッションにも恩恵をもたらすだろうとしています。
Image Credit: NASA/JPL-Caltech/SwRI/ASI/INAF/JIRAM
Source: NASA/JPL
文/松村武宏