こちらの画像はカシオペヤ座の方向にある「J025027.7+600849」と呼ばれる星形成領域です。塵が豊富で暗いためにややわかりにくいものの、右側の紫色に輝いている部分から反対方向の左側へと尾が伸びているように見えます。
およそ6500光年先にある輝線星雲「Sh2-199」に位置するJ025027.7+600849は、「frEGG:Free-floating Evaporating Gaseous Globules」(直訳すれば「自由浮遊している蒸発するガス状グロビュール」)というタイプの星形成領域に分類されています。同様の天体の姿は研究者によってオタマジャクシや金魚にたとえられています。
星形成領域で誕生した巨大な恒星が輝き始めると、その放射によって周辺の水素ガスが電離して赤く輝くHII領域が形成されます。frEGGはそのような電離した熱いガスの泡の中にある比較的低温なガスと塵の小さな集まりで、周辺の熱いガスとの境界は画像のような紫色や青色の輝きで示されるといいます。幾つかのfrEGGでは内部で低質量の星が形成されており、太陽もこのような星形成領域で誕生したのかもしれません。
なお、J025027.7+600849があるSh2-199は、すぐ近くにあるハート形をした輝線星雲「Sh2-190」とともに「Heart and Soul Nebulae(ハート&ソウル星雲)」と呼ばれることがあります。また、Sh2-199はその姿から「胎児星雲」とも呼ばれています。冒頭の画像は「ハッブル」宇宙望遠鏡の掃天観測用高性能カメラ(ACS)によって撮影され、2020年7月13日に公開されたものです。
Image Credit: ESA/Hubble & NASA, R. Sahai
Source: ESA/Hubble / APOD
文/松村武宏