■今日の天体画像:天の川の星間空間を流れる磁場

銀河には多くの星がありますが、星と星の間にある空間(個々の星の影響をあまり受けない空間)を「星間空間」と言います。星間空間には何もないわけではなく、主にはガス成分や星間ダストといった物質が存在しています。この画像は欧州宇宙機関(ESA)のプランク衛星の観測データによるもので、2015年に公開されたものです。

この図は楕円形になっており、これで私たち銀河系の全体を表現しています。この表現方法は「銀河座標」を用いたものです。学校の数学でxやyといった文字を使ってグラフを描く際などに「座標」が登場しますが、あれはx、yを使って点の位置を表現するのに役に立ちました。ここでは銀河系での天体の位置を表現するために銀河座標というものを使っています。私たちの銀河系は渦巻の腕をもつ円盤状の形をしていますが、この画像ではその円盤を横から見たような表現になっています。ただし、単に横から見ると円盤の手前側と奥側が重なってしまうので、太陽系(銀河円盤の中にあります)から周りを360度見回したときの角度で表しています。みかんの皮をむいて横向きに広げていくようなイメージです。一方、縦は銀河円盤から離れていく方向です。太陽系から見ると横方向は360度の方向があるのに対して、縦方向は上に90度、下に90度の計180度となり、このような横長の楕円形で表現されることになります。銀河座標をイメージするにはESAの宇宙望遠鏡「ガイア」が全天を観測してこの楕円形を作り出す動画がわかりやすいと思いますので、ご覧ください(動画の55秒くらいから全天を観測し始め、1分30秒あたりから「皮をむいて」楕円形を作っていきます)。

実はプランク衛星が主に観測しようとしたのは銀河系のダストではなく「宇宙マイクロ波背景放射」と呼ばれる、宇宙の始まりのころに起源をもつ放射(電磁波)でした。それを観測しようとすると、どうしてもその手前にある私たちの銀河系のダストが検出されてしまいます。プランク衛星は宇宙マイクロ波背景放射の観測で大きな成果を上げたのですが、その点では銀河系のダストは観測の「邪魔者」でした。しかし、銀河系における星の誕生やその他の現象を研究するためにはこの上なく重要なデータでもあるのです。

星間ダストは磁場があると向きが揃えられ、そこから観測する電磁波では「偏光」という現象が起こります。電磁波はその名の通り「波」なのですが、その振動面に偏りがある(ばらばらではない)状態を偏光と呼んでいます。プランク衛星は偏光を検出する装置を搭載しており、偏光観測から磁場の情報を得ることができました。プランク衛星が観測したこのデータでは、ダストの量が多いほど色が赤く、少ないところは青く着色されています。銀河系の円盤部分ではダストが多く、中央やや上にあるアーチ状の部分は、銀河系中心部のブラックホール周辺からガスや物質が吹き飛ばされてきた名残りなのかもしれません。一方で筋状の模様は偏光観測から得られた磁場の向きを示しています。

銀河や宇宙のスケールでは重力が大きな役割を果たしますが、星間ガスやダストはこの磁場の流れに沿って存在しており、星間ガスは星が誕生するための主な材料にもなるため、星間物質の分布だけではなく星形成にとっても磁場は重要な存在であることがわかります。磁場が星の誕生を含め銀河の構造形成や進化にどのような影響を与えるのか、現在も研究が続けられています。

 

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Image: Image Credit: ESA, Planck; Text: Joan Schmelz (USRA)
Source: NASA
文/北越康敬

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