火星の北極冠のすぐ南側、北緯73度に中心がある「コロリョフ・クレーター」。直径82kmのコロリョフ・クレーターは縁から底までの高低差が約2kmあるものの、クレーターの縁に囲まれた冷気が氷を熱から保護するため、内部は最大で厚さ約1.8kmの氷床に一年中覆われているといいます。
欧州宇宙機関(ESA)は7月2日、ESAの火星探査機「マーズ・エクスプレス」が撮影した画像をもとに作成された、コロリョフ・クレーターの上空からの眺めを再現した動画を公開しました。まるで火星の大気圏内を飛びながら撮影した映像のようですが、実際にはマーズ・エクスプレスに搭載されている「高解像度ステレオカメラ(HRSC)」によって火星の周回軌道上から撮影されたデータが用いられています。
動画はコロリョフ・クレーターに接近していくところから始まり、クレーターの縁にそって地上を斜めに見下ろしながら周回しつつ、クレーター全体が見えるように上昇したところで終わります。平らに広がる内部の氷床がクレーターの縁の手前では斜面になっている様子や、周辺ではコロリョフ・クレーターの内部だけが宇宙からも見えるほど大量の水の氷に覆われている様子がよくわかります。
なお、コロリョフ・クレーターの名称は、人類初の人工衛星「スプートニク1号」の打ち上げや、ユーリ・ガガーリン氏による初の有人宇宙飛行といった歴史的なミッションの責任者として活躍した、旧ソ連のセルゲイ・コロリョフ氏にちなんで名付けられています。
Image Credit: ESA/DLR/FU Berlin
Source: ESA
文/松村武宏