超新星爆発を描いた想像図(Credit: M. Weiss)

太陽の8倍以上の質量がある恒星は超新星爆発を起こして中性子星やブラックホールが形成されると考えられており、中性子星やブラックホールの合体にともなうとみられる重力波が重力波望遠鏡によって何度も観測されています。今回、2017年に重力波望遠鏡によって捉えられたブラックホールが、太陽の100倍前後の質量がある大質量星の爆発によって形成されたブラックホールだったとする研究成果が発表されています。

■重力波で観測される合体前のブラックホールの質量は実質的に太陽の52倍以下

2017年に重力波望遠鏡の「LIGO」「Virgo」によって捉えられた重力波「GW170729」ブラックホールどうしの合体にともなって放出されたとみられており、合体前のブラックホールのうち片方の質量は太陽の約50倍とされています。

野本憲一氏(東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構)らの研究グループは、大質量星が超新星爆発に至る過程をシミュレーション上で再現した結果、GW170729で観測された合体前のブラックホールの片方は「脈動型電子対生成超新星」(PPISN:Pulsational Pair-Instability Supernovae、脈動性対不安定型超新星とも)によって形成されたものであり、このタイプの爆発で形成されるブラックホールの質量は52太陽質量(※)が上限であるとする研究結果を発表しました。

※…太陽質量=太陽1個分の質量

研究グループによると、太陽の40~80倍の質量がある恒星は自重を支えきれなくなることで生じる重力崩壊型の超新星爆発を起こし、もとの質量に応じた重さのブラックホール(38太陽質量以下)が形成されるといいます。それよりも重い太陽の80~130倍の質量がある恒星は、内部の温度が高まることで電子と陽電子(電子の反粒子)の対生成が始まって内部が不安定になり、膨張と収縮(脈動)を繰り返した末に爆発する脈動型電子対生成超新星(PPISN)に至るとしています。

この脈動型電子対生成超新星では、爆発前に繰り返される脈動にともなって恒星の一部が吹き飛び周囲に放出されるとみられていますが、恒星の質量が大きいほど脈動にともなう放出量が増えるため、最終的に形成されるブラックホールの質量は52太陽質量が上限で、恒星の質量が一定以上になるとブラックホールの質量は逆に小さくなるといいます。

いっぽう、太陽の130~300倍の質量がある恒星の場合、脈動を経ずに激しく爆発する「電子対生成不安定型超新星」(PISN:Pair-Instability Supernovae、対不安定型超新星とも)に至り、爆発後にブラックホールは残らないといいます。研究グループは以上のシミュレーション結果をもとに、GW170729で観測された約50太陽質量のブラックホールは脈動型電子対生成超新星によって形成されたとしています。

また、太陽の300倍以上の質量がある恒星からは150太陽質量以上のブラックホールが形成されると想定されているものの、それほど巨大な恒星はあまり多くは誕生しないとみられることから、研究グループでは重力波で観測されるブラックホールは実質的に52太陽質量以下になるだろうと結論付けています。

爆発前の恒星の質量と形成されるブラックホールの質量の関係を示したグラフ。赤丸は今回の研究におけるシミュレーションによるもの。恒星(親星)の質量が太陽の120倍を超えるとブラックホールの質量は小さくなる(Credit: Shing-Chi Leung et al.)

 

Image Credit: Shing-Chi Leung et al.
Source: カブリ数物連携宇宙研究機構
文/松村武宏

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