4000個を超える太陽系外惑星の発見により、この宇宙には多様な惑星が存在することが明らかになっています。今回、木星のような惑星として一度は形成されたか、あるいは形成されかけたガス惑星のコア(核)とみられる系外惑星が見つかったとする研究成果が発表されています。
■ガスの外層を失ったか、最初からガスを捕獲できなかった可能性
David Armstrong氏(ウォーリック大学)らの研究グループは、NASAの系外惑星探査衛星「TESS」による観測データをもとに、南天の「ろ(炉)座」の方向およそ730光年先に系外惑星「TOI-849b」が見つかったと発表しました。
TOI-849bの直径は海王星よりも一回り小さい地球の約3.4倍(海王星は地球の約3.9倍)で、主星の「TOI-849」を18時間で1周する小さな軌道を描いていることから、表面温度は摂氏およそ1500度に達するとみられています。研究グループがチリのラ・シヤ天文台にある「高精度視線速度系外惑星探査装置(HARPS)」を使って追加観測を実施した結果、TOI-849bの質量は地球の約39倍(海王星の約2.3倍)で、平均密度は約5.2g/立方cmという地球に近い値であることも判明したといいます。
研究グループによると、これほど大きな惑星であれば形成時に周囲のガスを捕獲して木星のようなガス惑星に成長することが予想されるものの、内部構造モデルによる分析ではTOI-849bが主に岩石や金属でできており、水素やヘリウムのガスで構成される外層は質量にして約4パーセント以下しか存在しないことが示されたといいます。これらの結果をもとに研究グループでは、TOI-849bはむき出しの状態になったガス惑星のコアだと考えています。
コアがむき出しになった原因として、研究グループは2つの可能性を示しています。1つ目は、TOI-849bも木星のようなガス惑星として一旦形成されたものの、潮汐作用や他の惑星との衝突といった何らかの理由によって外層のガスを失った可能性。2つ目は、主星を取り囲んでいた原始惑星系円盤に隙間が生じていたりコアが形成されたのが遅かったりしたためにガスを捕獲できず、ガス惑星として成長することができなかった可能性です。
直接見ることができない木星のコアについては今も謎が残るものの、むき出しのコアであるとする今回の研究結果が正しければ、ガス惑星のコアを理解する上での重要な情報がTOI-849bの観測から得られるかもしれません。Armstrong氏は「太陽系の惑星では不可能な方法で惑星のコアを観測する機会が得られたのです」とコメントしています。
Image Credit: University of Warwick/Mark Garlick
Source: ウォーリック大学 / ベルン大学
文/松村武宏