高光度青色変光星(LBV:Luminous Blue Variable、高輝度青色変光星)は、質量がとても大きく、太陽より何百万倍も明るく輝く恒星とされています。ある矮小銀河で2011年には存在が確認されていた高光度青色変光星が、2019年の観測では確認できなくなっていたとする研究成果が発表されています。
■以前よりも暗くなったか、あるいは超新星爆発を起こさずに崩壊したか
みずがめ座の方向およそ7500万光年先の矮小銀河「PHL 293B(Kinman Dwarf galaxy:キンマン矮小銀河)」では、2001年から2011年にかけて、高光度青色変光星の存在を示す観測データが得られていたといいます。Andrew Allan氏(ダブリン大学トリニティ・カレッジ)らの研究グループは、進化の末期にあたる恒星を研究する上で格好の対象と思われたこの高光度青色変光星を観測するために、2019年8月にチリにあるヨーロッパ南天天文台(ESO)の「超大型望遠鏡(VLT)」をPHL 293Bに向けました。
ところが、2019年の観測データからは、PHL 293Bに高光度青色変光星の存在を示す兆候が確認できなかったといいます。Allan氏は「星が消えていたことを知って驚きました。これほど巨大な恒星が、超新星爆発を起こさずに姿を消すのは非常にめずらしいことです」と振り返ります。
超大型望遠鏡による2002年と2009年の観測データを再分析した研究グループは、当時はこの高光度青色変光星のアウトバーストが観測されていて、2011年以降のどこかの時点で終了した可能性が高いと指摘。アウトバースト後に星が暗くなり、さらに一部が塵に隠されたことで、観測データから兆候を確認できなくなった可能性があるとしています。
また、研究グループは別の理由として、この高光度青色変光星が超新星爆発を起こさずに崩壊してブラックホールが形成された可能性にも言及しています。研究グループでは、PHL 293Bの高光度青色変光星が観測されなくなった原因を探るために、2025年に観測が始まる予定の「欧州超大型望遠鏡(ELT)」などによる追加の観測・研究が必要としています。
Image Credit: ESO/L. Calçada
Source: ESO
文/松村武宏