夕焼け空と星空を重ね合わせたようにも見えるこの画像は、南天の「ほ座」の方向およそ3000光年先にあるHII領域「Gum 15」の一部分をクローズアップしたものです。背景の赤い色は電離した水素が発する光(Hα線)によるもので、水素は画像の中央下で明るく輝く恒星「HD 74804」などが放射する紫外線によって電離しているとみられています。
画像には左右や上下に走る帯状の暗い部分が写っていますが、これは豊富な塵によって向こう側からの光がさえぎられている場所です。まるでGum 15の向こう側にある星が裂け目を通して見えているようにも感じられますが、実際にはGum 15と地球の間に位置する星々がたまたま重なって見えているにすぎません。
Gum 15のようなHII領域は集まったガスや塵から星が形成される場所であり、数百万年の間に数千個の星々が誕生するとも考えられています。やがて若い星々の恒星風によってガスや塵が吹き散らされたり、質量の大きな星が超新星爆発を起こしたりすることで、Gum 15は星団を残して消え去るとみられています。
Gum 15のクローズアップ画像は2014年11月3日に、全体の画像は同年7月2日に、どちらもヨーロッパ南天天文台(ESO)から公開されています。
Image Credit: ESO
Source: ESO(1) / ESO(2)
文/松村武宏