小惑星「リュウグウ」からのサンプル採取を実施した宇宙航空研究開発機構(JAXA)の小惑星探査機「はやぶさ2」は、今年12月に地球までサンプルを運んだ後に、別の天体へと向かう延長ミッションも検討されています。今回、小惑星の破片が集まってできたと考えられてきたリュウグウが、活動を終えた彗星なのではないかとする研究成果が発表されています。
■表面物質の約60パーセントが有機物の可能性
中村栄三氏(岡山大学惑星物質研究所)らの研究グループ(PML: Pheasant Memorial Laboratory、岡山大学固体地球研究センター)は、はやぶさ2が撮影した映像をもとに、リュウグウの表面にある物質の構成を分析しました。その結果、リュウグウ表面の物質は従来の数パーセントという予想を大きく上回る、およそ60パーセントの有機物を含んでいる可能性が示されたといいます。
研究グループは、はやぶさ2がサンプル採取のためにタッチダウンを実施した際に撮影された映像に、表面が白色(明るい)で内側が黒色(暗い)の破片が写っていたことに注目しました。リュウグウはこれまで地球に落下した炭素質コンドライト隕石に対応するC型小惑星とされてきたものの、炭素質コンドライトであれば宇宙風化を受ける表面は色が暗くなるはずだといいます。
そのいっぽう、過去に実施された宇宙風化の再現実験では、暗い色の有機物が太陽風によって白色化することがわかっているといいます。そこで過去の実験結果をもとにリュウグウの低い反射率を説明できる有機物の含有量を調べたところ、前述の約60パーセントという結果が導かれたとしています。研究グループは、半年後に地球へもたらされるサンプルの解析に期待を寄せています。
■リュウグウは氷を失った彗星だった?
これほどの有機物が含まれている原因として研究グループは、リュウグウが彗星だった可能性を指摘しています。有機物を含む氷でできた彗星が太陽を周回する過程で氷が昇華して失われ、有機物が濃縮されていくと同時に、衝突した小天体を取り込むことで岩石が集まります。氷がすべて失われると彗星としての活動は終わりを迎え、岩石の破片と有機物でできた小惑星が残される、という流れです。
また、小天体の衝突や他の天体との相互作用による振動で高密度の岩石が中心付近に沈み込んだり、氷が昇華して彗星のサイズが小さくなったりすると、角運動量保存の法則によって自転が速まるといいます。研究グループは、こうして加速された自転にともなう遠心力によって、リュウグウのそろばん玉のような特徴的な姿が形成された可能性にも言及しています。
Image Credit: Pheasant Memorial Laboratory
Source: Pheasant Memorial Laboratory
文/松村武宏
最終更新日:2024/09/28