火星に到着してから14年が経ったNASAの火星探査機「マーズ・リコネッサンス・オービター(MRO)」は、現在も火星の地表を撮影し続けています。
今年の3月にMROが取得した観測データから作成されたこの画像には、地質学的なタイムスケールで最近形成されたとみられる直径約300mのクレーターが写っています。2018年に発生した砂嵐のように火星では全球規模の激しい嵐が起きることもありますが、このクレーターはまだそれほど砂に覆われてはおらず、なめらかな周囲とは対照的な荒れた地面をさらしています。クレーターの内部や周囲には、形成時に飛び散ったとみられる岩が幾つも転がっているのが見えています。
このときMROは、このクレーターよりも南にある直径15mほどのさらに新しいクレーターも同時に撮影しています。小さいほうのクレーターは2010年3月に見つかったもので、2008年から2010年のどこかの時点で形成されたばかりとみられています。撮影時の現地は午後だったため、クレーター内部の東側斜面が太陽に照らされていますが、そこには地下の氷と思われる白っぽい層が露出しているのが写っています。
こうした火星の新しいクレーターは、地下の浅いところに何が埋もれているのかを把握したり、付近の地質を調べたりするうえで貴重な情報を研究者にもたらしてくれています。
Image Credit: NASA/JPL-Caltech/University of Arizona
Source: アリゾナ大学 / NASA/JPL
文/松村武宏