2010年、天の川銀河の銀河円盤から上下に向かってそれぞれ3万光年近くの高さまで広がる泡状の構造「フェルミ・バブル」が見つかりました。フェルミ・バブルは天の川銀河の中心で発生した爆発現象によって形成されたとみられていますが、この爆発にともなって発生したフレアが大小マゼラン雲から伸びる「マゼラニックストリーム」にまで影響を及ぼしていたとする研究成果が発表されています。

■フレアは銀河中心から20万光年離れたマゼラニックストリームを照らしていた

およそ350万年前に起きたとされる爆発の影響を示した図。爆発によってフェルミ・バブル(Fermi Bubbles)が形成され、放射されたフレアがマゼラニックストリーム(Magellanic Stream)の元素を光イオン化させたとみられる(Credit: NASA, ESA and L. Hustak (STScI))

太陽の数百万倍の質量があるとされるフェルミ・バブルは人の目には見えず、ガンマ線宇宙望遠鏡「フェルミ」による観測で発見されました。いっぽう、マゼラニックストリームは天の川銀河の伴銀河である大マゼラン雲と小マゼラン雲から伸びるガスでできた細長い帯状の構造で、天の川銀河の中心からおよそ20万光年離れたところにあります。

Andrew Fox氏(STScI:宇宙望遠鏡科学研究所)らによると、2つの構造は銀河中心で起きた同じ爆発の影響を受けたようです。研究チームが「ハッブル」宇宙望遠鏡を使ってマゼラニックストリーム越しに観測した21個のクエーサーからの光を分析した結果、マゼラニックストリームにある電離したケイ素や炭素がフレアによって光イオン化されていた可能性が示されました。

今からおよそ350万年前、天の川銀河の中心で発生した爆発によってフェルミ・バブルが形成されたと考えられています。この爆発は強力なフレアをともなっていたとする研究成果がJoss Bland-Hawthorn氏(今回の研究にも参加)らによって昨年発表されていますが、研究チームではこのフレアがマゼラニックストリームの元素を光イオン化させたと考えています。爆発には天の川銀河の中心にあるとされる超大質量ブラックホールが関わっているとみられており、Fox氏は「銀河中心のブラックホールが双方の構造に対して大きな役割を担っていたことが見えてきました」とコメントしています。

350万年前といえば、アウストラロピテクスが生きていたとされる時代です。今の人類はフェルミ・バブルなどの観測を通して当時の様子を推測していますが、私たちの遠い祖先はフレアの輝きをその目で見ていたかもしれません。

350万年前の夜空を描いた想像図。当時生きていた人類の祖先はフレアを目撃していたかもしれない(Credit: NASA, ESA, G. Cecil (UNC, Chapel Hill) and J. DePasquale (STScI))

 

Image Credit: NASA, ESA and L. Hustak (STScI)
Source: NASA
文/松村武宏

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