観測技術の進歩によって宇宙初期の様子が少しずつ明らかになりつつありますが、未解明の謎も残されています。宇宙で最初に誕生した世代の星「初代星」(ファーストスター)を「ハッブル」宇宙望遠鏡を使って探したところ、その証拠を見つけることができなかったとする研究成果が発表されています。

■ビッグバンから数えて5億年~10億年の宇宙に初代星の証拠は見つからず

ハッブル宇宙望遠鏡によって撮影された銀河団「MACS J0416」(Credit: NASA, ESA and M. Montes (University of New South Wales))

初期の宇宙には水素などのように軽い元素しか存在しておらず、それよりも重い炭素、窒素、酸素、鉄といった元素は恒星の内部で生み出されたり、超新星爆発やキロノバといった激しい現象にともない生成されたりしてきたとみられています。そのため、初代星は水素やヘリウム、わずかなリチウムから形成されたと考えられていますが、これまでのところ初代星の存在を示す確かな証拠は見つかっていません。

Rachana Bhatawdekar氏(ESA:欧州宇宙機関)らの研究チームは初期宇宙の銀河を観測するために、「エリダヌス座」の方向にある銀河団「MACS J0416」にハッブル宇宙望遠鏡を向けました。この銀河団までの距離はおよそ45億光年ですが、銀河団の向こう側にあるさらに遠くの銀河からの光(電磁波)の進む向きを変える重力レンズ効果をもたらしているため、初期宇宙の銀河をより詳しく観測するために活用することができます。

銀河団を構成している銀河からの光を取り除く方法を新たに開発したBhatawdekar氏らは、重力レンズ効果を受けた遠方銀河からの光を詳しく分析しました。その結果、ビッグバンから5億年~10億年の期間に存在していた銀河からは、初代星の証拠が見つからなかったといいます。言い換えれば、初代星が誕生したのはビッグバンから5億年以内だったことをこの結果は示していることになります。

初期宇宙の銀河は早くから形成されていた可能性があるとする研究成果がこのところ相次いで発表されていますが、Bhatawdekar氏が「これまで考えられていたよりもずっと前に銀河が形成されていたことを示しています」とコメントしているように、今回の観測結果も同様の可能性を示唆するものとなります。すでに多くの研究者たちが期待を述べているように、来年打ち上げ予定の「ジェイムズ・ウェッブ」宇宙望遠鏡など次世代の観測手段による遠方銀河の観測が待たれます。

 

関連:124億年前に整った円盤銀河が存在していた。アルマ望遠鏡の観測で判明

Image Credit: NASA, ESA and M. Montes (University of New South Wales)
Source: ESA / NASA
文/松村武宏

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