青や赤に輝く星々が密集しているこの場所は、「りゅうこつ座」の方向およそ1万5000光年先にある星形成領域「Gum 29」にある星団「Westerlund 2」です。およそ6~13光年に渡り広がるWesterlund 2は200万歳未満の若い星々から構成されていると考えられていて、そのなかには太陽の100倍に達するほど重い大質量星も含まれるとされています。
画像は2015年に「ハッブル」宇宙望遠鏡の25周年記念画像として公開されたもので、人の目に見える可視光線で撮影したものと、星形成領域の塵の向こうを見通すために赤外線で撮影したものが合成されています。最近、このWesterlund 2に関するElena Sabbi氏(STScI:宇宙望遠鏡科学研究所)らによる研究成果が発表されました。こうして遠目に見ると美しい星団ですが、その中心部分は荒々しい環境のようです。
Sabbi氏らが2016年から2019年にかけてWesterlund 2にある太陽の0.1倍~5倍の質量を持つ5000個近くの恒星を調べたところ、そのうちの1500個ほどにおいて、形成中の微惑星や惑星のもととなる原始惑星系円盤の存在を示すとみられる明るさの変化が検出されたといいます。ただし、明るさに変化がみられたのは星団の外周付近にある恒星に限られており、星団の中心から4光年以内にある恒星では検出されなかったようです。
研究チームでは、星団の中心付近にある恒星で惑星形成の兆候が確認されなかった理由について、大質量星が影響していると考えています。Westerlund 2では少なくとも37個の大質量星が知られており、いずれも強力な恒星風や紫外線を放っているとみられています。大質量星は星団の中心に集まっているため、中心近くにある星々は大質量星の恒星風や紫外線による影響を強く受けることになります。
「もしも中心付近にある恒星を取り巻く円盤が存在していたとしても、蒸発したりサイズや組成が大きく変化してしまったりして、惑星は形成されにくくなるでしょう」とSabbi氏は語ります。研究に参加したDanny Lennon氏(カナリア天体物理学研究所)は、来年打ち上げ予定の「ジェイムズ・ウェッブ」宇宙望遠鏡による追加観測の実現に期待を寄せています。
Image Credit: NASA, ESA, the Hubble Heritage Team (STScI/AURA), A. Nota (ESA/STScI), and the Westerlund 2 Science Team
Source: ESA / NASA
文/松村武宏